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提督はBarにいる・外伝
混迷する戦場
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数値、急激に増大……なおも上昇中!」

「落ち着け!大方『奴』が復活したんだろうよ」

 慌てるCICの人員の中に居て、ただ1人提督だけは落ち着き払った様子で煙草をふかしている。事前に掴んでいた情報の通り、リバースド・ナインが復活したのだとしたら、今の現況にも想像が付く。

「それより上空警戒を怠るなよ?レーダーが使えない今、頼れるのは目視だけだ」

 復活した魔女が望む物はただひとつ。己を沈めた不遜な者共への報復だ。狙われるのはニライカナイか、それとも自分達か。二者択一。

「提督、あれを!11時の方向!」

 CICでカメラを操作しながら外部の監視を行っていた監視員が画面を指して叫ぶ。その画面を注視すれば、映っていたのは黒い靄のような塊が、ゆっくりとだが動いている映像だった。恐らくアレは復活したリバースド・ナインが放った艦載機の群れだろう。

「動いている方向、どこか判るか?」

「ニライカナイ艦隊の予想進路に向かっています!」

「っつー事は、とりあえずこっちが狙われる危険性は減ったって事だな……」

 ふぅ、とため息を吐き出した瞬間に、再び画面に変化が起こった。ニライカナイ艦隊の居るとされる方向から、強烈な光が放たれたのだ。

「ッ……今度は何だ!?」

「解りません!原因不明!」

 やがて発光が収まるが、見た目の変化は無い。画面には、ニライカナイ艦隊に向かう艦載機の群れが動く様が映っている。

『提督、emergency!』

 異変を告げてきたのは、サラトガだった。

「どうした?」

『それが……サラの航空隊が消えました!上空を飛ばしていた機も、残してあった機も全部!』

「はぁ!?本当に消えたのか?格納庫も確認したのか!」

 異変はまだ続く。

「提督、金剛及び武蔵から通信!第一・第二艦隊の航空部隊が全機消失!」

 撃墜でも、墜落でもなく、消失。何の前触れもなくぱったりと消え失せたというのだ。

「一体、何がどうなってやがる……」

 提督は、譫言のようにそう呟いた。理解が追い付かない。だが、そんな風に呆けている暇はない。何しろ、敵は化け物級の空母だというのに、此方のエアカバーは消滅してしまったのだから。

「全艦、対空警戒!今空襲されればひとたまりも無いぞ。攻撃中止のち反転、鎮守府へ向けて急速離脱!」

 不本意ながら、事実上の降伏宣言だった。


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