偽伝、無限の剣製 (前)
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のだろうか。
『士郎くんが固有結界を展開した時に、結界の範囲内には君達以外にもそれがあったね』
「ドクター、それとはなんですか?」
マシュが訊ねる。ロマニは強い緊迫感を表皮に這わせるようにして言った。
『すぐ側まで倒れ込んできていた巨大な樹木だよ。丁度、巨大な樹木の中腹辺りのね』
「……ぁっ、」
マシュの瞳に理解の色が広がる。途端、顔を強張らせて周囲を警戒し出した。
だがその必要はない。紛いものとはいえ、この結界の内側は俺の領域。意図せずして取り込んでしまった異物の感知など、赤子の手を捻るよりも容易い。
『――固有結界内の魔力反応急激に増大! 来るぞマシュ、士郎くん!』
警告と共に、赤い土が盛り上がる。
莫大な魔力噴流、活火山の噴火の如き勢力で大地を蹴散らして飛び出てきたのは、濁流のように垂れ流される汚濁の魔力塊である。
濡れた泥のような粘性のそれが、ぬちゃりと周囲に撒き散らされ、触手じみてうねる樹木が錨のようにソラを刺した。
「……!」
蒼穹のソラを汚染する油。それの正体に気づいたネロが、悲痛に表情を歪めた。
帝都を埋め尽くしていた、異様な偉容を誇った樹木、その中枢にあったと思われる、恐らくは樹槍の本体。即ち――
『! 気を付けるんだみんな、それからは聖杯の反応がする! 間違いない、それはローマ建国王の――』
「――いいや。奴はもう、ロムルスじゃない」
魔神霊、顕現
夥しいまでの眼、眼、眼。
さながら魔神柱の如く、魔力の塊である樹木の表面を深紅の眼球が埋め尽くしていた。
うねる触手の樹面を掻き分けるようにして、膨大な魔力熱量に焼け爛れた、天性の肉体が進み出てくる。
見る影もない、神性も真性も失った神祖の遺骸――それに寄生する魔神の悪意。聖杯の力で、英霊ロムルスを汚染する特異点に投錨されたもの。
「ぉ、ぉお、おお……な、なんたる事だ……」
余りに無惨。余りに悲惨。怨嗟を漏らし、睨み付ける眼は激怒の涙に濡れてすらいる。
ネロは怒りの限度を超えて言葉を失っていた。薔薇の皇帝が、神祖に託された『火』を一層激しく燃え盛らせる。原初の火の銘を持つ剣を、ぎゅぅぅう、と強く握り締めた。
見ろ、と注意を喚起するためにオルタが促した。
ヘドロのように溶け落ちた樹槍を持つ魔神が立っている。
沸騰した溶岩のような魔力を放ち、その膨大な魔力は何重にも重なった防壁となっていた。あれがある限り、火力という面で騎士王に大きく劣る女狩人では、とても有効打を与える事は叶うまい。
む、とアタランテは物言いたげにオルタを見る。侮られたと感じたのか
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