偽伝、無限の剣製 (前)
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臓をシェイクされているような激甚な痛みを覚え眩暈がする。
それでも、マシュに無理をさせるよりはマシだった。アルトリアとオルタをこの局面で落とすよりずっと良かった。友と呼んだネロに縋るよりもこれが最善だったと言い張れるだろう。
カルデアから通信が入る。驚愕にまみれたそれは、果たしてロマニのものだった。
『この反応は……固有結界か……!? まさか士郎くん、きみがこれを……?』
「すまんがくっちゃべってる暇はない! ロマニ、戦闘服を通じて俺にカルデアの電力を廻してくれ。そう長くは保たんぞ……!」
元々限界寸前だったのだ。無理矢理魔力を捻り出したせいで左腕が逝った。完治させるのに一週間はかかると見ていい。どう足掻いた所でもうこの特異点では使い物にならない。
張り詰めたものを感じてくれたのか、ロマニが「滅茶苦茶痛いけど、我慢してくれよ!」と言って電力を回してくれた。改造戦闘服のシステムが、電力を魔力に変換し、俺の魔力負担を軽減してくれる。代わりに、魔術回路に得体の知れない異物が流れ込んでくるような感覚がある。
痛いとは思わなかった。痛覚は操作できるものだが、今は純粋に痛みを感じる機能が落ちていたのだ。固有結界を維持する魔力をカルデアが担ったが、それもあくまで一部だけ。到底、アルトリア達の聖剣には回せない。
「これが……固有結界。先輩の、心象風景……」
「恥ずかしいから、あまり見ないでくれると助かる」
感嘆符でも付きそうな表情のマシュやアルトリア達に、俺は渋面で言った。
俺にとって自らの恥知らずっぷりを露呈させる最悪の禁呪だ。出来るなら使用は避けたかったのである。
そもそもこれは、戦闘向けの魔術ではない。これが有効なのは有象無象の雑魚か、英霊の中でも最強に位置する英雄王に対してだけ。今回はシェルター代わりに展開して外界から切り離し、ローマに押し潰されるのを防ぐのに使ったが……それとて苦渋の思いを圧し殺しての事。不本意だった。
「……マシュは俺の前に。ネロ、アタランテは俺の傍だ。アルトリアとオルタ、二人は前衛として構えろ」
「……? 何故だ、シェロ? そなたのこれは世界から切り離された異世界なのだろう? ならば警戒すべきものはないであろう」
「――必要がなければ言わん! 早くしろ!」
一喝し、すぐに指示通りの陣形を取らせる。流石に歴戦の英霊達は動きが早い、アタランテは即座にネロの手を掴んで俺の傍らまで来るや油断なく弓を構え、一拍遅れ駆けつけたマシュの死角をカバーする。
アルトリアとオルタは瞬時に、黄金と漆黒の聖剣を晴眼に構え周囲を警戒した。
『なるほど、そういう事か』
固有結界をマスターが使える事への驚きを呑み込み、ロマニは納得したふうに呟いた。固有結界の特性を、彼は知っている
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