偽伝、無限の剣製 (前)
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。この身に赦されたのは、仮初めのもの。所詮は空想、幻想に至らない夢のカケラ。
「still 」
七節。
詠唱は完成する。偽物だと自嘲した口で、情けない本音が囀ずられる。
それでも、と。これしか自分にはないのだから。
己のためではなく。せめて誰かのために刃を振るう事は、赦してほしい。そう願う。
認める者はいない。俺の秘密を知る者もいない。だがそれでいい、誰も知らなくていい、俺が偽物のエミヤだと、知らなくていい。みんな俺を本物だと信じる。なら、俺は偽物でも、本物として恥知らずに駆け続ける。
だって、どう足掻いたところで。魂が偽物でも、この体はきっと――
「"unlimited blade works"」
――走り続ける限り、折れる事はないと信仰する。
真名が世界に熔け、崩落する樹国がソラより落ち、大地にあるもの悉くを押し潰す刹那。
鉄を鍛つ火が駆けて、人理の守護者らを取り込んだ。
固有結界
曰く、固有結界とは悪魔が持つ『異界常識』だった。それを人間にも使用可能な範疇に落とし込み、魔術として確立したのが魔法に最も近い魔術。魔術世界の禁呪である。
それは術者の心象風景で現実の世界を塗り潰し、内部の世界そのものを変えてしまう魔術結界。御大層なことに魔術に於ける到達点の一つとされるもの。本来衛宮士郎のような未熟な魔術使いに至れる境地ではない、叡知の結晶だ。
だが。
この体は固有結界にのみ特化した魔術回路。この回路を通して行使される魔術は、悉くがリアリティ・マーブルの副産物に過ぎない。
剣製が出来るのではない。剣製しか出来ないのだ。魂ではなく、肉体に埋め込まれた聖剣の鞘に、起源を剣に変えられて。故に固有結界の現す異能は剣製の枠組みから外れ得ない。
衛宮士郎は、例えどう在っても、剣製に特化した魔術使いでしかないのだ。
「これは……」
――晴れ渡る蒼穹のソラ。
果てなく広がる底無しの青空を、赤い土に突き立つ無限の剣が支えている。
雲一つない晴れ模様が憚りなく心象を示す。
影一つ生まない日輪の歯車が淀みなく廻る。
無限に精製される剣群、絶え間なく流れる清流の涼風。なんて恥知らずの具現なのか。偽物は己に恥じるものなどないと信じているのだ。
完璧に滑稽。まさに道化だ。だが、弁えよ。道化の所業であれ、扱う用途によっては価値もある。急速に溶けゆく魔力に命尽き掛けるのを、俺は歯を噛み締めて堪えた。
流石に馬鹿にならない魔力消費量だ。人理が焼却されている故に、世界の修正力もほぼなくなっているにも関わらず、俺如きでは展開しただけで内
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ