全て、全て、全ての言葉はローマに通ずる
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はいつでもあろう。苦境に陥っても、その心を強く持てば、そなたもまたローマの真髄を得られるだろう」
「……!! 神祖!」
「うむ」
不意に立ち上がり、がっしと手を取り合った士郎と神祖に、ネロはなんだか顔が青白くなるほど緊張していたのが嘘のように気が楽になった。
なんだか、緊張していた自分がバカらしくなったのかもしれない。ふっ、と肩から力が抜けて、表情にいつもの余裕が戻ってきた気がする。
士郎は武器庫に向かい、ごそごそと底の方を漁り始め、隠し床を開けて中から一つの壺を取り出した。
濃厚な風味の薫る、神秘的な香り。アルトリアとオルタの目の色が変わった。ネロも、思わずその壺に眼を奪われる。
士郎はそれらを意にも介さず、神祖の前まで戻り、壺を開けた。
「得難き知恵を与えてくれた礼だ。世界樹の種を使って作った肴だ。誰にも振る舞ったことはないが……俺の知るなかでは現状、最も旨いと思う」
「ほお……」
差し出された壺を見て、中から一粒の種を手に取り神祖はその薫りを楽しむようにしながら、ゆっくりと口に運んだ。
そして、神祖は始めて、沈黙する。
「……」
「……」
「……ローマである」
ぽつりと溢した感想と共に、ロムルスは微かな笑みを湛えた。
その言葉の意味を、士郎は理解できた。
なるほど、これがローマか、と。
完全に酔っていた。
「……ところでなんの話をしていたんだったか」
「ふむ? ……ふむ。さて、なんだったか」
「神祖!? シェロ!?」
酔っ払い達は、やがて微睡むように薄く微笑みを浮かべ、座ったまま寝入ってしまった。
ネロが泡を食ったように名を叫んだが、二人の耳には届かなかった。
話が進むのは、夜が明け、陽が昇って二人が目を覚ましてからである。
「……で、だ」
ひくひくと目元を痙攣させ、底冷えのする眼差しで見下ろすのは、眼前で正座し顔を俯けるアルトリアとオルタ、アタランテにネロ……そしてマシュである。
本日は晴天なり。陽は既に高く、麗らかな日差しに包まれた森に、獣の遠吠えが木霊していた。
昨夜、時間を無駄に浪費してはならないのに、ついうっかりと酔い潰れ、七時間もの間、熟睡してしまったのは不覚である。
しかし、しかしだ。それはこちらの過失として認めざるを得ないが、かといって斯様な狼藉が許されるわけではない。
俺は、空になっている世界樹の種の入っていた壺を指差し、静かに、一切の感情を込めずに質問した。
「……誰が、俺のツマミを食った。怒らないから、正直に答えろ。正直に、だ」
誰が予想するだろう。一晩、たった一晩だ。それだけで大事なツマミが全
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