第二十七話 幸村と茶その一
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第二十七話 幸村と茶
慶次は幸村に場所のことを問うた。
「して真田殿の茶を煎れる場所は」
「はい、茶を煎れる場所はあります」
それはとだ、幸村は答えた。
「屋敷の奥に」
「左様ですが」
「茶室ではないですが」
それでもというのだ。
「その場所はです」
「しかとありますか」
「そちらで宜しいでしょうか」
「はい」
満面の笑みでだ、幸村は慶次に答えた。
「さすれば」
「それでは」
慶次も応え幸村に屋敷の奥に案内してもらった、そこは確かに茶室ではなかったが茶を煎れることは出来る場所であった。
「茶道はせずとも」
「茶を飲むことがあると思われてですな」
「設けました」
その茶を飲む場所をというのだ。
「この様に」
「左様ですな、ではです」
「これより」
「煎れさせてもらいます」
慶次は幸村から慎んで茶器を借りてそうしてだった、早速茶を煎れはじめた。その動きを見るとだった。
手慣れているものだった、普段の傾きぶりからは思いもよらぬ丁寧な動きで茶を的確に入れていってだった。
瞬く間に一杯入れて幸村に献上した。
「如何でしょうか」
「はい、お見事でした」
「茶の煎れ方おわかりになられましたか」
「覚えました」
一度見てというのだ。
「これで。それではです」
「真田殿もですな」
「茶を煎れられるかと」
こう答えるのだった。
「これで」
「それは何よりです、それは」
「茶をですな」
「飲ませて頂きます」
是非にと言うのだった。
「これより」
「それがしもまた」
こう言ってだ、そしてだった。
慶次は自分の茶も煎れてそのうえで二人で茶を飲んだ、幸村は茶を一杯飲んでから慶次に微笑んで言った。
「結構なお手前で」
「有り難きお言葉」
「茶の味を見ましても」
「それがしの茶はですか」
「お見事です、前田殿は茶にも通じていますな」
「政以外は好きなので」
慶次は笑って応えた。
「気が向けば飲んでいまして」
「ご自身でもですか」
「煎れていてです」
そしてというのだ。
「この通りです」
「慣れていますか」
「結局茶も最初は誰も出来ぬし知りませぬ」
「学んでこそですか」
「はい、教えて頂き目でもです」
それでもというのだ。
「学べます」
「左様ですか」
「ですから」
それでというのだ。
「それがしの煎れ方見て頂き何よりでこれから」
「利休殿に教えて頂くこともですな」
「よいことです、織田家では古田殿がお詳しいですぞ」
「あの御仁が」
「はい、無類の茶好きでありまして」
それでというのだ。
「あの方はです」
「非常にですか」
「茶の道にお詳しいです。利休殿の直弟子でもあられま
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