暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
真紅の神祖
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
した。
 ネロも美味であると笑みを溢していた。うん、いい仕事をしたと満足しておく。

 暫し取り憑かれたように皆が黙って貪り続ける。ロマニが「ボクも食べたいな……」と呟いたが無視した。無理な話である。
 俺はそれを見守り、少ししてから手拭いで入念に手を拭き、手と口許をべとべとにしていたマシュに近づいて、口許を拭いてやる。

「あ……」

 恥ずかしそうに頬を染める。夜の焚き火に照らされていたから、その頬は橙色に染まって見えていた。
 旨いか、と聞くと、マシュはこくりと小さく頷く。言葉では言い表せません、と。

「先輩と、それから皆さんと一緒に食べてると、とても胸が温かくて……」

 そこまで言って、マシュは不意に、ぽろぽろと涙を流し始めた。
 辛い道程だ、溜め込んでいたものもあるだろう。俺はマシュを抱き寄せ、胸の中で嗚咽を溢すマシュの背中をそっと撫でた。

 時の流れはまったりとしていた。
 和やかな空気だ。
 やがて泣き止んだマシュは、すっきりしたような、照れたような、恥ずかしげな表情をしてありがとうございました、と頭を下げた。
 気にするな、と返す。誰もが通る道だからな、と。
 そう言うと、マシュは周りを見渡した。アルトリアとオルタ、ネロとアタランテ。それぞれが無言で、しかし目を逸らさずに苦笑していた。

 よし、食うか! と俺も食べ始める。モツの串焼きと葡萄酒を合わせ、ひとり堪能していると、アルトリアが物欲しげに見てきたが……

「悪いな、この酒はマスター専用なんだ」

 と言って断っておく。アルトリアは悔しげにしながらも、その食欲は衰えを知らず、ゆっくりと、されど確実に豚を食らっていった。
 ネロにもやれない。ネロはまだ現代の酒に慣れていないので、容易に酔い潰れるのが目に見えていた。

 肉を切り取り、米と野菜と一気に食べる。我ながら旨いと思えた。特にこの、かりっとした皮が堪らん。酒が進む進む。

「――なんというか」

 ふと、ネロが小さな声で言った。

「シェロの料理は、胸がぽかぽかとするな」
「……そうか?」
「そうだろうとも。シロウだからな」

 首をかしげた俺に、オルタがしたり顔で頷いた。
 ……わからん。気分的なものなら、それは受け取り手次第なので、俺には何も言えなかった。

 しかし、そういえば、昔にも同じことを言われた覚えがある。確かあれは――

 ――と、何かを思い出そうとしていた時だった。



「ふむ。これもまた、浪漫(ローマ)であるか」



 ――聞きなれぬ、されど無視できぬ声がした。

「……っ!!」

 最初に反応したのはアルトリアだった。瞬時に立ち上がり、聖剣を構え――それを、俺は目で制した。
 ちらりと
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ