真紅の神祖
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した。
ネロも美味であると笑みを溢していた。うん、いい仕事をしたと満足しておく。
暫し取り憑かれたように皆が黙って貪り続ける。ロマニが「ボクも食べたいな……」と呟いたが無視した。無理な話である。
俺はそれを見守り、少ししてから手拭いで入念に手を拭き、手と口許をべとべとにしていたマシュに近づいて、口許を拭いてやる。
「あ……」
恥ずかしそうに頬を染める。夜の焚き火に照らされていたから、その頬は橙色に染まって見えていた。
旨いか、と聞くと、マシュはこくりと小さく頷く。言葉では言い表せません、と。
「先輩と、それから皆さんと一緒に食べてると、とても胸が温かくて……」
そこまで言って、マシュは不意に、ぽろぽろと涙を流し始めた。
辛い道程だ、溜め込んでいたものもあるだろう。俺はマシュを抱き寄せ、胸の中で嗚咽を溢すマシュの背中をそっと撫でた。
時の流れはまったりとしていた。
和やかな空気だ。
やがて泣き止んだマシュは、すっきりしたような、照れたような、恥ずかしげな表情をしてありがとうございました、と頭を下げた。
気にするな、と返す。誰もが通る道だからな、と。
そう言うと、マシュは周りを見渡した。アルトリアとオルタ、ネロとアタランテ。それぞれが無言で、しかし目を逸らさずに苦笑していた。
よし、食うか! と俺も食べ始める。モツの串焼きと葡萄酒を合わせ、ひとり堪能していると、アルトリアが物欲しげに見てきたが……
「悪いな、この酒はマスター専用なんだ」
と言って断っておく。アルトリアは悔しげにしながらも、その食欲は衰えを知らず、ゆっくりと、されど確実に豚を食らっていった。
ネロにもやれない。ネロはまだ現代の酒に慣れていないので、容易に酔い潰れるのが目に見えていた。
肉を切り取り、米と野菜と一気に食べる。我ながら旨いと思えた。特にこの、かりっとした皮が堪らん。酒が進む進む。
「――なんというか」
ふと、ネロが小さな声で言った。
「シェロの料理は、胸がぽかぽかとするな」
「……そうか?」
「そうだろうとも。シロウだからな」
首をかしげた俺に、オルタがしたり顔で頷いた。
……わからん。気分的なものなら、それは受け取り手次第なので、俺には何も言えなかった。
しかし、そういえば、昔にも同じことを言われた覚えがある。確かあれは――
――と、何かを思い出そうとしていた時だった。
「ふむ。これもまた、浪漫であるか」
――聞きなれぬ、されど無視できぬ声がした。
「……っ!!」
最初に反応したのはアルトリアだった。瞬時に立ち上がり、聖剣を構え――それを、俺は目で制した。
ちらりと
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