戦場の王、大国の王
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する樹木、押し寄せる大樹を粉砕しながら進み、打って出てきた生身の敵兵を一万は蹂躙しただろう。ローマ全土を虱潰しに駆けずり回り、破壊した城は四つを数え、討ち取った指揮官は二十七を数えたか。国土は半壊、大将の潜んでいそうな場所もだいたい見えてきた気がする。
襲いかかってくる樹木の津波を正面から突撃して破壊し、見えてきた新たな都市の前に隊列を組んでいる敵軍十万――いや二十万か?――の姿を目視する。
そこだけは、森ではなく、開けた空間になっていた。
なんともまあ、雑魚ばかり揃えられたものだと感心する。
肌の所々が樹木と化し、霊体への攻撃を通せるようになっているらしい奴さん。
シャドウサーヴァントの影もちらほら見えた。暗殺者、騎兵、狂戦士に獣に槍兵の小娘。それにあれはダレイオス三世のシャドウまでいやがる。
流石に雑魚と言うのは過小評価か。雲霞の如く並みいる軍勢はまさに総力の結集だ。ここが決戦の場と定めたらしい。
遥か彼方の大都市、その城壁の上に、恰幅のいい赤い装束のサーヴァントがいるのが見える。
あの巨人的な存在感。二十万の大軍を自らの規格に組み込む統率力。あれが、カエサルか。なるほどローマ最大の英雄の名は伊達ではないらしい。狂気のきの字も見られない。これは、手強そうだ。
しかし二十万の大軍を一ヶ所に集めるなど正気ではない。こんな大胆な布陣を取れるという事は、兵站を気にかける必要はないと言うことだろうか? であればあの兵も、ここに来るまでに散々見た人面樹と同じで死んでるようなものなのだろう。
なら遠慮はいらねえな――呟き、クー・フーリンはロイグに突撃を指示しようとして――ふと、気づく。気づいてしまった。
気づかねばよかった。このまま突撃し、蹂躙してしまえば良かったのだ。
だが、気づいてしまった。
生身の、完全に生きている、人間の、子供。
身なりからして奴隷の、少年。
――見るな!
ロイグが叫んだ。自我の稀薄さを感じさせない、往年の猛々しい声。だが遅い。既にクー・フーリンは気づいてしまっていた。
少年が、叫んだ。――ねえ、一緒にご飯を食べようよ。
は。と、笑う。有名すぎるのも考えものだな。
黒と灰の二頭の竜馬と、死の棘を持つ豪炎の戦車。そして己の姿と紅い槍。更にここまで散々に暴れ回ったことから得られる情報。
例え、宝具を使ってなくても分かるだろう。この身が持つ呪いを。
苦笑して、クー・フーリンは戦車を止めた。ロイグは自我を持つが、扱いは宝具の一部である。クー・フーリンの意向を妨げることはない。
そしてクー・フーリンは己のゲッシュに従う為、戦車を降り、少年の誘いに乗って、隠されていた台に近づき、少
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