テロリストは斯く語りき
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得意気な笑みを向け、士郎はグラスに注いだ日本酒をこれみよがしに飲み干した。ぐぬぬ、と呻くネロの視線こそ最高の肴とでも言うかのような表情だった。
とまあ、戯れ合いはここまでとして。うがああ! と暴れるネロをアルトリアとオルタ、マシュが三人で完全に身動きを封じている傍ら、士郎はクー・フーリンに向けて労いの言葉をかけた。
「ご苦労さん。流石はアルスター最強の戦士は物が違う。一つの神話で頂点に君臨する武勇は伊達じゃないな」
「誉めろ誉めろ。オレは誉められて伸びる性質なんでね。誉めた分だけ働くぜ、オレはよ」
ちなみにアーサー王伝説も広義の意味で言えばケルト神話に属している。
なのにクー・フーリンは知名度が低くアーサー王伝説だけが有名なのは……まあ今はどうでもいい。
「……ランサー。俺は決めたよ。『死ぬなら前のめり』だな」
「へぇ、腹が決まったか。良い面だぜマスター。男なら、死ぬと分かっていても突っ込まなきゃならねえ時もある」
なんでもないように主人の決意を聞き、クー・フーリンは明るく歯を見せて笑い掛けた。
恐怖の色を呑み、しかしそれに足の竦む恐懦はない。なるほどイイ男だ、オレの次にな、とクー・フーリンは笑った。そんなサーヴァントに苦笑して、その分厚い胸板を拳で叩く。
「特攻だ。敵のど真ん中に突っ込み、敵大将を殺る」
「いいねぇ、好きだぜそういう分かりやすいのは。で、もちろんオレに先鋒は任せてもらえるんだよな?」
当然のように、クー・フーリンは確信していた。主人の敵と一番に矛を交えるのは自分の役割だと。
だが。信じがたいことに、士郎は首を振った。横に。
「いや。先鋒はない。俺はマシュとアルトリア、オルタとネロともう一人で敵の大将を討つ。あんたの席はない」
「……は?」
――途端。クー・フーリンの目が険悪に歪む。世界が死ぬほどの怒り。それを感じた途端、辺りは緊張する。
「それはオレが力不足だから、とでも言うつもりか? ダレイオスの野郎を相手に力は見せたと思ってたんだが」
「充分に見た。その上で言っている。クー・フーリン、お前に敵大将は任せられない」
「――いちおう、聞いとく。なんでだ?」
その答え如何ではこれからの関係に遺恨を残すことになる。そんなこと、分かりきっているのに、士郎に気負った様子は微塵もなかった。
あくまで自然に。士郎は言う。
「なあランサー。今、ローマはどこにある?」
「あ?」
「ネロがローマで、カエサルもローマだ。……だが勘違いしてないか? 敵の大将はカエサルじゃないんだぞ」
「――」
言われてみれば、そうだ。クー・フーリンはカエサルというビッグネームに、勝手にカエサルを倒すべき敵と思っていたが……更にデ
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