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人理を守れ、エミヤさん!
英雄猛りて進撃を(下)
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もねぇよ。殺意が足りねえ。比較対象があれだけどな、メイヴの絶対殺すっつう呪いじみた妄執と比べたら、お前さん、見劣りどころか比べるのも烏滸がましく思えちまう。

「目隠ししといてオレに勝てるつもりでいんのか? ……だとしたら、それは許し難い侮辱だ。いいぜ、そっちがその気なら、オレがテメェに付き合う道理は無い。さっさと終わらせちまうが、文句はねえな。あっても聞かんが」

 今のマスターの許での初仕事なのだ。
 あれだけの大見得を切っておきながら苦戦したのでは面目に関わる。
 盲目の敵を相手に大人げないかもしれないが……少し本気を出すとする。

 左手の盾で近い間合いの内側の敵兵を押し退けついでに首を折り、目の前の敵を前蹴りで吹っ飛ばして空白の間合いを一瞬作る。雲霞の如くに押し寄せる敵に呑まれず駆け、眼前で剣を振り上げる骸骨の頭を踏んで高く跳躍した。
 一連の動作の中で、魔力を吸い上げていた魔槍が紅く発光していた。くるりと回転して姿勢を制御し力を溜めて、

「宝具じゃねえぜ? それだけは安心していい。勿体ないからな、テメェには」
 
 特に狙いもつけずに戦象の上の王を狙い、魔槍を投擲。数十もの死体が盾となって立ちふさがるが、全てあっさり貫通し、狂王の振るった戦斧を弾いてその体を傷つけた。
 憤怒の怒号を発する不死軍の王。対照的に、虚しそうに目を細めるクランの猛犬。
 生前、幾度も経験した単独での「殲滅戦」が始まった。









 と、まあ。

 結末は順当だった。

 最初の一投以外、クー・フーリンは宝具を出し惜しんだ。ただルーンを駆使し、槍で貫き、薙ぎ払う。強烈な一撃を与えて即座に離脱し、再び軍の一角を突き崩してはまた離脱。
 これを百回繰り返した。見る見る内にその数を減らしていった不死の一万騎兵。ダレイオス三世の決死の奮戦も虚しく、まるで相手にもされずにひらりひらりと躱されるばかり。どれだけ激怒しようと、赫怒に燃えようと、冷徹に軍勢を削られていく。
 槍の一突きで三騎屠り、横に薙ぎ払えば七騎の首が宙を舞う。魔槍の呪いを使うまでもなく、ルーンは不死の概念を無視して殺せてしまっていた。
 元々が『死ににくい』だけだ。本当の不死でも不滅でもない。そうだと謳われているだけで、真実の不死不滅には程遠い。
 所要時間は二時間ほど。逃げず、退かず、単調な攻めを繰り返す狂王が相手だからか、クー・フーリンの作業は順調に済んだ。

 最後には流石に面倒になったのか、魔槍の真名を解放して二度ほど蹴り穿ち、千の鏃で雑魚を一掃すれば――後に残ったのは、指揮する不死兵団を失った狂王、ただ一人だけだった。

「あー……なんだ」

 大軍殲滅の専門家クー・フーリンは、完全に冷めきった顔で、吠え狂いながらなお
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