英雄猛りて進撃を(上)
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うにハッと顔色を変えた。
「――どのみちもう詰んでんだ。小難しく考えたってしゃあねぇだろ。シンプルなものにはシンプルにぶつかるのが王道ってもんさ。違うかい?」
「……道理、ではあるな」
「それに、来たぜ。敵だ」
「……!」
(こちらアサシン。南東、敵軍勢を視認した。数は一万、異形の軍だ)
丁度、切嗣からの念話がその言葉の裏付けとなる。
士郎は暫し黙り込み、クー・フーリンに訊ねた。
「……どうやって気づいた?」
「空気さ。戦の空気がした。こういうのは、勘でなんとなくわかっちまうもんなんだぜ」
「……そういうものか?」
「そういうもんだ。さって、と。敵はどんなか、分かるかい?」
「……」
(切嗣。敵軍の特徴は)
訊ね、返ってきた答えをそのまま伝える。
「異形、動く死体と骸骨の軍勢、大将は三メートル超えの巨漢らしい」
「っ……! それは、ダレイオス三世だ!」
ネロが顔を険しくして言った。厳しい表情だった。
難敵、というだけではない。何か個人的な借りがある、そんな顔だった。
士郎は、クー・フーリンを見る。
「やれるか?」
「応。それが命令ならな」
「じゃあ頼む。その力を俺達に見せつけてくれ」
あっさりと命じた士郎に、ネロは驚きながら食って掛かった。ネロは知っているのだ、あのダレイオス三世を。
エリザベートやタマモを屠った、悪魔の軍勢を。
「――正気か!? 敵は一万の軍勢だぞ! それも、ただのサーヴァントよりも厄介な不死性までも持っている!」
「ふぅん。一万の大軍、不死性を持った厄介な奴か……。で? それだけかよ?」
「な、なに?」
反駁され、ネロは気色ばんだ。
クー・フーリンは。
クランの猛犬、戦場王と号された大戦士は。
にやり、と伝説の勇者に相応しい硬骨な笑みを浮かべた。
「たった一万でオレを止められるとでも?」
クー・フーリンは、一騎討ちよりも、対軍戦闘をこそ真価とする多数戦闘のプロフェッショナル。
生前、アルスターの戦士全てが大痙攣により動けなくなり、メイヴ率いる対アルスター連合軍数十万を相手に戦い抜き、勝利して伝説を成し遂げた。
相手はただの戦士ではない。戦いに生きた修羅の戦士揃いのケルト戦士である。
これにより、メイヴは戦いによって勝つことを諦めた。陰謀で、クー・フーリンは破滅した。
複数の国を全て同時に相手取り――大将狙いでも何でもない、軍勢相手に真っ向勝負を挑んで数十万に勝利した怪物を相手に。
……たった一万?
「――」
「不死の軍? 死なねえ奴はごまんと見てきたが、殺せない奴は見たことねぇな」
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