英雄猛りて進撃を(上)
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眼を見開いていたものである。自分達の知るクー・フーリンとまるで違う別格の霊基を感じ取っていたのだ。
「貴公がそれを言うと、嫌みにしか聞こえないな」
アルトリアが苦笑しながらクー・フーリンに対して言った。
位負けしそう? 何を馬鹿な。冗談にしたって笑えない。完全な状態のクー・フーリンに位で並ぶ者はそうはいない。気を抜くと、アルトリアすら武者震いに剣を執る手が強張りそうなほどなのに。
断言できる。武人として、この特異点に存在する全ての者がこの英雄の前には霞んでしまう、と。
「おっと。お前さんにそうも称えられると悪い気はしねぇな。名にし負うアーサー王の聖剣の輝き、オレも照らされてみたいもんだ」
「ふ、世辞と分かっていても、私にとっては誉れだ。これより先の戦い、大いにあてにさせてもらうぞ、ランサー」
「応、幾らでも頼りな。命がけの旅、荷物と期待は重いほどいいってな。……っと、空気が違いすぎてパッと見わからなかったが、同じ顔が三、それもとんでもねえ別嬪さん揃いと来た。しかも二つは同じ女、と。オレのマスターはまたまた業の深そうな感じだな?」
さらりと嫌みなくアルトリアからの賛辞を流し、光の御子は意味深な眼を士郎に向ける。士郎は憮然として言った。
「ランサー、あまりからかうな。アルトリアとオルタは兎も角、ネロは違う。マシュに至っては妹みたいなものだ。そんな相手じゃない」
「へえ? なるほどね、道は長いか。負けるなよ、盾のお嬢ちゃん」
「……?」
「おっと、こっちもか。やれやれ、楽しそうな職場だこったな」
女は怖ぇぞ、早いこと手を打っとけ、と耳打ちしてくるクー・フーリン。余計なお世話と言えない士郎の哀しさ。何やら苦笑しつつ、クー・フーリンは本題に入った。
「で。どうすんだマスター。状況は分かったが、オレとしちゃさっさと動きたい気分なんだがね」
「知恵が欲しい。どう考えても行き詰まってる気がしてならないから、俺達とは違う視点で考えられるあんたの意見を聞きたい」
「んなの言うまでもねえ。退けば死、進めば死、なら進んで前のめりに死のうぜ」
「……あのな」
飄々と、なんでもないように気負わず言うものだから、士郎は流石に呆れてしまった。
不思議と、切迫感はない。彼と共に戦える、それだけで負ける気がしなくなってくるのだ。
王や将軍が感じさせるカリスマではない。もっと別の、戦士同士の信頼が作る安心感――戦いを恐れぬ勇猛さを与える英雄の風格が感じられる。
なるほど、アルスターの戦士のほとんどが慕ったというのも分かる人徳だな、と士郎は思う。
クー・フーリンは、ぴくりと眉を跳ね、南東の方角に眼を向ける。しかし、それだけで、特にリアクションはなかった。
一拍遅れて、アルトリアが何かを気取ったよ
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