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人理を守れ、エミヤさん!
英雄猛りて進撃を(上)
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片腕のないダレイオス三世は大軍を率い、ネロを猛追してきた。だがここでも、これまでと同じように、エリザベートとタマモキャットがネロを逃がした。

 ネロは仲間の全てを失い、神祖の期待にも沿えずに逃げ続け、失意と絶望の中、なんとかブリタニアまで辿り着いたのだという。



「――神祖ロムルスを筆頭に、皇帝カエサル、アレキサンダー、ダレイオス三世ときたか。おうおう、錚々たる面々だねぇ。位負けしねぇか今からちょい不安になっちまうぜ」



 欠片もそう思っていない語調で明るく言って、好戦的な笑みを浮かべたのは、満を持して召喚されたサーヴァント。クラスは槍兵。アイルランドの光の御子、クー・フーリンである。

 匂い立つ強壮たる佇まい。身長は嘗て見知ったものでありながら、その重量感は冬木の時の比ではない。全身のしなやかな筋肉と、鍛え上げられた肉体の醸す質量は、どう見ても以前の青い槍兵より一回り上回っていた。

 身に纏うのは青い戦装束。その上に、白いリネンのローブとルーンを象った刺繍入りの外套を羽織り、ケルト文様の金のブローチを身に付けている。
 白銀の籠手と肩当てが逞しい肉体を堅固なものに映えさせ、青みを帯びた黒髪を無造作に結わえた姿が香り立つ男の色気を増幅させていた。
 彼はアルスター王の甥にして、太陽神ルーの子である。正しい意味での貴種の中の貴種だ。
 光の御子とまで称えられた美男子はアルスター屈指の文化人でもあり、俗に言う貴公子という形容がぴったりと似合っていた。

 ケルトの大英雄は、真紅の呪槍で肩を叩きながら大まかな話の流れを反芻し、獰猛な笑みを口許に刷く。

 彼のマスターはネロ――ではない。
 士郎である。当初、予定を変更してクー・フーリンをネロに召喚して貰おうとしたのだが、ネロはこれを固く拒否。これより共に戦っていくことになる仲間を、他者に指図されるまま召喚するのは違うだろう、と言った。
 縁に頼らず、触媒に依らず、まったくのランダムで召喚する。それがネロの意思だった。
 相性だとか、戦力だとか、そんな雅でない基準はない。自分が喚び、来てくれたどこの誰とも知れぬ英雄と駆けていくのがマスターとしての覚悟だった。
 それを否定することはできなかった。士郎は、やむなく自身でクー・フーリンを呼び出し、そして見事、クー・フーリンは槍兵として完全な状態で現界したのである。

(ランサーのサーヴァント、クー・フーリン。召喚に応じ参上した。……ん? また会ったな。またぞろ妙な状況みてぇだが、いつぞや言ってた通りにこき使うつもりかよ?)

 軽く笑いかけて来ながらそう言う彼の存在感は、この場の誰よりも重厚なものだった。
 再会を喜ぶより先に、圧倒されてしまった。
 マシュが気圧され、アルトリアとオルタは驚愕に
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