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人理を守れ、エミヤさん!
第二章「栄華失墜皇帝グラウディウス」
逝くは死線、臨めよ虎口
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せるわけにはいかないだろう。今ぐらいは休ませてもいい、と俺は思う。しかし、ロマニは割りと容赦なく言った。

「レオナルドはすぐ起こすとして……」
「……」
「実動部隊として今回君達を支援するのは僕とレオナルドだ。気は遣わなくていいよ? 無理してるのはレオナルドだけじゃない。みんなそうだ。特に、きみたちはね」
「……まあ、ロマニがそう言うなら」
「ああ――レイシフトの準備は整っている。今回君たちが向かうのは一世紀のヨーロッパだ。より具体的に言うと古代ローマ。イタリア半島から始まり、地中海を制した大帝国だよ」
「一世紀の古代ローマ、か。著名なのはカリギュラ帝とネロ帝だな」

 こういった話には即食いついてきそうなダ・ヴィンチは、完全に沈黙している。いたたまれない気分になるが、構わずロマニは続けた。

「良いかな士郎くん。転移地点は帝国首都であるローマを予定している。地理的には前回と近似のものと思ってくれても構わない。存在するはずの聖杯の正確な場所は不明。歴史に対して、どういった変化が起こっているかも不明だ」

 ふむ、と腕を組む。頭の中でざっと計算し俺は訊ねた。

「……その転移地点は変更できるか?」
「む、出来なくはないけど、なぜだい?」
「いや……これは俺の経験則だが、いきなり人の集まる地点に突入してもろくなことにはならない。俺としては首都ローマより離れた――しかし離れすぎてもないブリタニア辺りが望ましい。どうだ?」
「……出来なくはない、とは思う。けどそこまで警戒することかな?」
「人あるところに災禍あり、だ。本当ならすぐにそういった場所に飛び込むべきなんだろうが、今回はそのセオリーを外した方がいい」
「……それは勘かな」
「ああ。勘だ。第六感的なものじゃなく、あくまで計算と経験から来るものだが」
「……」

 はぁー、とロマニは嘆息した。自分は文官、武官ではない。ならこういった現場の意見は尊重するべきだろう。それに、なんの考えもなく言ってるわけでもなさそうだし。仕方ないな、とロマニは頷いた。

「いいよ。ただし、十分時間はもらう。設定を変えるのもスイッチ一つで、というわけにはいかないからね。その間なにもしないわけにもいかないし、ブリーフィングを終わらせておこうか」
「ああ、頼む」
「作戦の要旨は前回と同じ、特異点の調査、修正。そして聖杯の調査および入手、または破壊だ。人類史の存続は君たちの双肩にかかっている。今回も成功させてくれ」

 ロマニは窶れた顔で、しかし静かに、強く言った。

「そして……。無事に帰ってくるんだ。いいね?」

 了解、とマシュと声が重なった。

 しばらくの沈黙の末、ロマニはレイシフトの設定の変更を終えたのだろう。何も言わず、無言で俺達にコフィンへ入るよう促し
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