いい加減に士郎くん!
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ある。
悪魔的な風貌の、目玉の飛び出した男の名は、かの悪名高き青髭……。嘗ての救国の英雄ジル・ド・レェであった。
声音こそ穏やかで場違いなほど落ち着いたものだったが、遠見の水晶から見て取れた光景にその眼が険しくなっている。
「ねえジル! なんかあいつ、あのヘンテコなドリルみたいな剣を弓につがえてるんだけど!」
「不味いですねぇ。こんな神秘も何もない城では防げないでしょう」
「あっちの王様なんか、聖剣ぶちかます気満々なんですけど。もう籠城とか無理でしょこれ。どう見てもこの城が私達を閉じ込める牢獄にしかなってないんだけど」
「ええ、ええ、これはもう打って出た方が賢明でしょう。邪竜を含めた全戦力で決戦を挑んだ方がいい。そちらの方が勝算がある。というより、どう見てもここに閉じ籠ったままでは完封されてしまうだけ。ジャンヌ、私も貴女の旗と共に全力で戦います。ですからどうか、号令を」
常の狂気よりも、卓越した軍略家としての本能が上回っているのだろう。青髭は平坦な、しかしジャンヌを落ち着かせる優しげな声で取り成した。
竜の魔女はその声に安心する。いつも困った時はこの声を聞いて落ち着いた。彼の軍略家としての能力は本物、仮にも一国の元帥であり、敗戦の憂き目にあった国を建て直した立役者、救国の英雄なのである。
「……そうね。そうよ。私の戦いはいつも不利なものばかりだった。戦局は絶望的じゃない。諦めなんて知らない。私は勝つの。あんなキ●ガイになんて負けないんだから」
ジルの言うことなら間違いない。そう信じられるから頷いて、ジャンヌはその竜の旗を振りかざした。
「邪悪なる竜、災厄の化身よ! 来なさい、そして蹂躙なさい! あまねく光、あらゆる命がおまえの贄だ。さあ、いでよ――ファヴニール!」
城内であってもまるで構わず、竜の魔女はその幻想種の頂点を召喚した。
呼び掛けに応じ、邪竜が顕現せんと爆発的な魔力の奔流を迸らせる。
その力の具現、暴力の息吹、邪なる波動に魔女ジャンヌ・ダルクは高揚した。
勝てる。この竜さえいたら。相手がアーサー王だろうとキチ●イだろうと、絶対勝てる! アーサー王を超える実力の騎士だってこちらにはいるのだ。敗けはない。
ふつふつと沸き立つ歓喜に、ジャンヌは高笑いした。
いや、しようとした。
その邪竜を召喚する異常な魔力の高ぶりは、未だ聖剣の射程圏内に到達していないカルデアの面々にもはっきりと感じられた。
カルデアのマスターは、これを新たなサーヴァントの召喚の予兆と捉えた。そしてそれを阻止しなければならないと考えた。
故に。手順を変えた。
聖剣、投影宝具の飽和攻撃ではなく。
まずは、意表を突くことにしたのだ。
「あはっ、あはは、あっははは―
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