第八十八話 大坂に戻りその八
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「だからね」
「俺達でか」
「仕切るんだよ」
「金になるしヤクザも抑えられる」
「だからね、まあお寺や神社にはね」
「そのままか」
「場所代位はね」
それ位はというのだ。
「払ってね」
「そのうえでか」
「やっていけばいいんじゃないかい?」
これが桜子の考えだった。
「それでね」
「場所代位はか」
「あんた宗教と政は別にしたいだろ」
「ああ」
その通りだとだ、英雄は桜子に答えた。この考えは久志と同じだ。
「日本ではかなりましだったと思うが」
「宗教が政治に関わるとね」
「妙なことになるからな」
「欧州とかだよね」
「あれは極端だがな」
元々政教分離は欧州からはじまったものだがこれは戦後日本の国家権力を悪とみなす考えから政治が宗教に介入することを防ぐものではなく宗教即ちキリスト教が政治に過度に介入してくることを防ぐ為の考えでフランス革命以降のことだ。
「しかしな」
「それでもだね」
「出来る限りな」
「宗教と政はだね」
「分けたい」
出来るだけというのだ。
「本当にな」
「そうだね、けれどね」
「これ位はか」
「全部白黒で分けられるかい?」
桜子は英雄に笑ってこうも尋ねた。
「あんたは」
「イエスかノーか」
「ああ、二者択一でいくかい?」
「白黒で決められる程世の中は簡単ではない」
英雄は桜子の笑っての問いに淡々とした表情で答えた。
「灰色もだ」
「あるね」
「白と黒はあるが」
しかしというのだ。
「世の中はむしろその中間の方が多い」
「灰色のね」
「その灰色を大いに使う」
「それが政だね」
「そうだ、だからこうした時もな」
「お寺や神社に場所代を渡すことも」
「あれこれ理由をつけてだ」
そうしてというのだ、こうした適当な理由付けもというのだ。
「政だ」
「曖昧でいいところは曖昧だね」
「それでいいな」
「結局世の中ってのはそうだね」
本当にとだ、また言った桜子だった。
「だから灰色のところをふんだんに使う」
「そうだ、博打についてもな」
「そうして金を確かに手に入れていって」
「兵も雇って常に使う様にしてだ」
「そうしてだね」
「力にしていく」
自分達の勢力にというのだ。
「金と兵をな」
「その二つがあればっちゃね」
愛実も述べた。
「まさに万全っちゃよ」
「その二つがなくて政が出来るか」
「理想はよくてもっちゃな」
「理想を現実にするにはな」
「力が必要っちゃな」
「力は色々だ、法も頭も弁舌もあるが」
「お金と軍勢はっちゃな」
愛実もわかっていた、その現実が。それで今言うのだ。
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