純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 15
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るから、忘れずに必ず受け取ってね」
「「「はーい」」」
「またね、プリシラ様」
「ええ。またね」
数十人の子供達が、ほんの少し名残惜しそうな表情を見せつつもバラバラと食堂の外へ歩いて行く。
やがて聞こえてきた元気一杯な歓声は、子供達一人一人の名前が書かれた箱をそれぞれに直接手渡しているベルヘンス卿へのお礼だろう。
後で頂きますと言って一人だけ食事の時間をずらしていたのは、この時の為だったのか。
上司を一人で働かせてはならないと、騎士達も慌てて立ち上がり
「お待ちください」
見覚えが無い、真っ白で小さな縦型ポットを手のひらにちょこんと乗せて立つプリシラに呼び止められた。
「すみません。子供達が作ったご飯、美味しくなかったでしょう? けれど、どうかお気を悪くしないで。皆は皆で、一生懸命作ってくれたんです」
「え? ……あ! いえ、これは!」
「その、そんなつもりでは……!」
「自分達も団長の手伝いをするべきかとっ」
不味い食事が嫌で逃げ出そうとした、とでも思われたのかと、一様に青褪める男達。
実際、食べ切る以前にもう一口食べられるかどうかすら自信が無いので、手伝おうとした事自体が本心であっても、言葉にすると体の良い言い訳を並べているようでとっても気まずい。
が。
「ベルヘンス卿ならお一人で大丈夫ですわ。事前の打ち合わせ通りですから」
プリシラは一瞬目を丸くしたものの特に気にした様子も無く、困惑する騎士達に頭を下げながら、飲みかけの水が入っている彼らのカップに透明な液体を少量ずつ注いで回った。
「……これは?」
「決して有害な物ではありません。そちらを大体十秒間口に含んで飲み込んだ後、もう一度スープを食べてみてください」
「「「 」」」
カップを眺め、手に取り、匂いを嗅いで中身を確かめていた騎士達が、そのままの姿勢で音も無く硬直した。
解ってはいたが、やはり完食せねばならないらしい。
この、「塩味って言うか寧ろ塩の塊」としか思えない、料理っぽい代物を。
舌が焼き切れるんじゃないかと心配になるくらいの塩辛い物質を。
「「「……っ、……っっ」」」
顔中に深すぎる皺を刻み、喉を鳴らし、冷や汗をかきながら周囲の動向を窺う騎士達だが。
「…………っい、……いただき、マス!」
「「!? っ……!」」
女子供相手に長い沈黙は失礼だと、半ば意地のみで騎士道精神を発動させた一人の「漢」が自身のカップを鷲掴んで飲み口を唇に宛てがい、ぐいっと力強く傾ける。
声にならない悲鳴を上げる仲間達の涙が滲む視線を一身に集めた漢は、言われた通り十秒間を遣り過ごしてから飲み込み、いざ参らん! とばかりに、匙で掬った塩糊(スー
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