お腹が空きました士郎くん!
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マッハだった。すぐ駆け寄ってお腹一杯になるまでオマンマを食べさせてあげたい衝動に駆られる。しかし、しかし、堪えろ俺……! 今のカルデアには、到底あの胃袋お化けを満足させるだけの物資は残されていない……!
俺はぐ、と耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだ。そして、俺は完成した俺専用の賄い食をお盆に乗せて、食堂のテーブルにまで移動した。……無意識にアルトリアのいる席に。
「し、シロウ……」
「……」
「すみません……私としたことが配慮に欠けていました。シロウのような料理人にとって、厨房とは神聖なものであるというのは気づいて当然のことなのに……どうにも、シロウには甘えてしまう。シロウなら許してくれると度し難いことを無意識に考えていました」
「……こっちこそ、すまなかった。突然怒ったりして悪かったと思う。こうやって怒ったりするのはあまりないことだから……正直、俺も戸惑ってる」
なんだか妙な空気だった。互いに謝りあっている。俺にとって、厨房があんなにデリケートな領域だとは思っていなかった。保護した子供達は、何故か普段の構ってちゃんぶりの鳴りを潜め、遠巻きにしていただけだが……もしかすると俺の雰囲気がいつもと違うと悟っていたのかもしれない。
反省せねば。俺が悪い。アルトリアは悪くない。
「あの、シロウ……これは……」
ふと、気がつくと俺は自分の賄い食をアルトリアの前に置いていた。
涎がスゴい。目が釘付けになっている。
……俺は苦笑した。
「――どうぞ召し上がれ。思えばアルトリアに振る舞うのは久し振りだもんな」
「し、シロウ……!」
感極まったようにアルトリアは俺を上目遣いに見上げ、神に祈るように両手を組んだ。
大袈裟な奴、と更に苦笑を深くする。……まあ、一食ぐらい抜いても大事ない。今回ぐらいは甘やかしてもいいかな、と思った。
アルトリアは行儀よく両手を合わせていただきますと言って、箸を器用に使って食べ始めた。
一口で、アルトリアの顔色が変わる。そして震える声で言った。
「シロウ――貴方が私の鞘だったのですね」
「おいそれここで言うのか」
なんか色々台無しにされた気分だ。
「シロウは神の一手を極めた。私はとても誇らしい」
「その表現はなんか違う」
あと、別に極めてない。料理に極まることなんてない。そこは間違えてはならない。
本当に美味しそうに食べてくれるアルトリアに、俺は自然と笑顔になってその食事風景を眺めた。
少し夢中になっていたアルトリアは、食べている姿をじっと見られていることに気づいて顔を赤くする。物言いたげな目をしていたが、それでも箸が止まっていなかった。
いちいち味を楽しみ、頷きながら食べる姿に、懐かしい思いが甦る。
そして、なんだ
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