お腹が空きました士郎くん!
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率直に言って、面倒くさい』
と、取りつく島もなく追い返されてしまった。
訓練しましょうと誘われたらほいほいついて行き、シロウのお酒は美味しいですねと言われたら彼女が反転するまで酌をして、話をしましょうと言われたらこの十年で磨いた話術で彼女を笑顔にし、なんやかんやと我が儘を受け入れて甘やかして青ニート化させてしまいつつあった。
駄目人間製造機の面目躍如である。このままじゃダメだと奮起した俺であった。
そんな矢先のことだ。マシュとの戦闘訓練を終え、厨房を借りて個人的な賄い食でもと料理していると、どこから匂いを嗅ぎ付けてきたのか青いバトルドレス姿のアルトリアがやって来た。
「シロウ、お腹が空きました」
――まるで餌付けされた子犬のように、見えざる尻尾をぶんぶんと高速回転させたオウサマが食堂に現れた。
「……」
ぐつぐつと煮込まれている春キャベツの重ね煮。白菜と豚肉のミルフィーユ。
シンプルだが味わい深い季節のスープと、熱々の炊きたてご飯の相性は抜群だった。
俺は不思議と凪いだ気持ちで、自然とアルトリアを黙殺する。いつもの俺にはできないことだ。アルトリアもちょっと調子が外れて頭の上にクエスチョンマークを出していた。
「……む。これはなかなか……」
春キャベツの重ね煮のスープを平たい小皿によそって、味見をし文句のない出来映えに自画自賛する。
俺の百八ある趣味の一つである料理の腕は、メル友のフランス料理界の巨匠から太鼓判を押される領域に至っていた。是非後継者にと迫られた時は満更でもなかったが、あれは酒の席のジョークに過ぎない。流石に本気にはしてなかった。
まだまだ料理は奥が深い。シンプルなものにこそ腕と知識、閃きが問われる。極めたとはとてもじゃないが言えたものではないし、真の意味で極められる者など存在しないと断言できた。
食堂にいたアルトリアが「おお……」と感嘆したような声を上げる。厨房から俺の賄い食の薫りが漂ってきたのだろう。目をこれでもかと輝かせて厨房を覗き込んで来ようとして――瞬間、俺は激怒した。
「出ていけ」
「えっ?」
「神聖な厨房に、料理する者以外が踏み込むんじゃあない……!!」
静かに激する俺に気圧されたように、セイバーはすごすごと引き下がっていった。
……今、俺は怒ったのか? セイバー、アルトリアに? はたと冷静になり、俺はその事実を咀嚼した。
確かに、俺は怒った。アルトリアのイエスマンと化していた俺が。アルトリアを甘やかすことママの如しと揶揄されたこの俺が、だ。
恐る恐る食堂のアルトリアを見ると、可哀想なほど小さくなって、何やら怯えた子犬のように濡れた目で俺を見ていた。
「ッ……」
罪悪感で心労が
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