暁 〜小説投稿サイト〜
ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第26話 俺の答え、私の答え
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害はとてつもなくなる。それを知っていたからこそ欲を抑えてきたエース。そんな自分の、1つだけ出来た願いは――

「ちょっと茶化されただけで赤くなるし、手を繋いだだけで微笑んでくれるほど純粋で、俺は何もしてあげられてないのに、ずっと愛してくれてた素敵な人。俺には勿体ないくらいの人との恋を、俺は叶えたいんだ。勇気を振り絞って『好き』って言ってくれたスプリンコートさんと一緒に、これからを歩きたいんだ」

 すべてが正論ではなくとも、綺麗事かもしれなくても、今のエースには決めたことへの迷いはなかった。

 始めて出来た本気で叶えたい願いをきちんと言葉に出来るほどに、エースは真っすぐ前を向いていた。

「俺といるだけで糾弾なんてたくさん受けるだろうし、ましてや彼女自身も双子で糾弾対象。一つ間違えば真っ黒な谷底に落ちて上がってこれないような綱渡りの、その先に未来がしかないと分かってて、それでもスプリンコートさんは1歩を踏み出した。なのに俺がここでスプリンコートさんの告白に答えたら、現実での大切な人が報われない。この答えは、ちゃんと本物と向き合って言いたいんだ。そうして始めて、俺は未来へ歩き出せる」

 自分の溢れ出た想いを素直に形にし続けて、目の前にいる本人ではない本人にぶつけてみる。これしか、今の自分に出来ることはない。

 ならば、それを続けることで、エースは活路を切り開いていく。

「じゃあフォンバレンくん。もしそれがわがままだと言われたとした時……フォンバレンくんはそれでも叶えようとするの?」

「するよ」

「え?」

 これまでずっと聞き手に回っていたフローラがようやく口を開き、1つだけ投げかけた疑問に、エースはシンプルな3文字の答えをあっさりと返した。その即答っぷりにフローラが何も言えずにポカンと口を開けて戸惑っているところに、エースは回答を付け足す。

「わがままって言われてもいい。双子の分際でって言われてもいい。俺は俺自身の願いを、俺のために叶えたい。それだけなんだ。他に何を言われようと、この願いだけは譲れない」

 最後まで言い切った時のエースには、心の中のつっかえが取れた感覚があった。これまで全く取れなかったものが、一気に落ちていく感覚を感じて、再び口を開く。

「もちろん、未来で何が起こるかなんて分からない。でも、何もつかめずに終わるくらいなら、1つくらい掴んでから終えたいんだ。1時間でも、1分でも、1秒でも長く俺はスプリンコートさんを幸せにし続けてあげたい。死にかけてはいるけど、まだ死んでないのなら、俺はそうしたいんだ」

 始めて、自分でつかみたいと思った未来を形にしたい。そう思わせてくれた少女を可能な限り幸せにし続けてあげたい。

 それは、静かな熱を言の葉に帯びたエースが語った、愛
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