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ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第26話 俺の答え、私の答え
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 時間にして数時間前。細かいセリフは違うかもしれないが、自室の中で起こったワンシーン。

 最初に面と向かって告げられた『好き』という言葉は、エースの心を揺り動かした。自分に向けられた無償の愛に戸惑い、飲み込めず、そうしてあのようなことになった。

 今回の『好き』は染み入るように心の中に入りこみ、すべての負の感情を溶かしていき、安らぎすら与えてくれそうな言葉だった。

「ずっと、一人の異性として大好きです」

 いつか聞いた言葉だとしても、慣れないのがこの言葉。好意を向けられることに慣れていないためだろう。とにかく慣れない、けれども気持ちのいい言葉。

「だから、私と付き合ってください」

 目の前の少女が、自らに向けてくれた明確な好意。それを受け入れるためのシーンの繰り返しがそこにあった。

「『はい、喜んで』」

「――!!」




「もし、今そう言うことが出来たなら、どれだけよかっただろうか。心の底から望んだ状況で、望む答えが言えたら、どれだけよかっただろうか」

 受け入れの言葉で一瞬顔を輝かせたフローラの前で、エースは言葉をこぼし始めた。

「でも、そうすればすべてが終わってしまう。だから言えないんだ。ごめん」

「じゃ、じゃあ……」

 エースの答えを否定と受け取り、悲しそうな目をするフローラ。

 わがままかもしれないが、エースはフローラの悲しそうな顔を見たくなかった。ずっと笑っていてほしかった。その輝くような笑顔に、何度も救われてきたのだから。

 だからエースは、自己フォローという形で答えを返した。数時間前に、パニックになって言えなかった言葉を。

「いや、嫌いなわけじゃないんだ。むしろ大好きなんだ。スプリンコートさんのこと、俺は大好きなんだ」

 エースの口にした、矛盾しているようにしか聞こえない言葉。もちろん理解の出来ないフローラは首を傾げた。

「今告白されて、やっと全部分かった。なんで俺があの世界を否定したかったのか。なんで今、告白をされたのか」

 そんなフローラへの返答のための言葉は、少しずつ熱を帯び始めていた。静かに、しかし確かに燃えるような火の熱さが、現れ始めていく。

「ずっと無視し続けて来たけど……やっぱりここは、俺自身が作り出した夢世界なんだよな? だからここにあるのは、俺以外のすべての要素が俺の知識と願望だけで構成されてる、いわば本物に限りなく近い偽物。俺の中の知識と他の人が持つ知識にボケでは説明しきれない乖離があることも、すべてが可能で、混ざり合うこともある夢ならばおかしくない話……違う?」

「……そうだよ。これは昨日フォンバレンくんが見た夢の中の、死にかけのフォンバレンくんが見ている夢の中。だから私もフォンバレンく
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