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戦国異伝供書
第二十六話 検地と刀狩りその九

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「お主自身に言いたいが」
「何でしょうか」
「お主は武芸も軍略もある」
「日々精進しております」
「そして学問もあるが」
 それでもというのだ。
「政もじゃ」
「そちらのこともですか」
「学んでじゃ」
「励めというのですな」
「そうじゃ、お主は政も励むとな」
「尚よいからですか」
「そちらも学び」
 そうしてというのだ。
「天下の為に励んではどうか」
「では」
「うむ、天下を治めるには人が足りぬ」
 それ故にというのだ。
「だからな」
「それがしもですか」
「政に励み」 
 そしてというのだ。
「天下の為に働くのじゃ」
「わかり申した」
「その様にな、それと茶の道はどうじゃ」
「茶ですか」
「お主は茶は好きか」 
 こう問うのだった。
「そちらは」106
「以前から誘われてはいます」
 信玄達武田家の者達からも勧められていた、だが幸村はまだ茶器を持っておらず出来なかったのだ。
 それで信長にも言うのだった。
「ですがそれがしは茶器を持っておらず」
「では譲ろう」
「殿がですか」
「わしは多くの茶器を持っておる」
 買い集め献上させたりしてだ、信長は実際に多くの天下の名器を持っているのだ。
「そのうちからな」
「譲って下さるのですか」
「茶の道も武士の嗜みじゃ」
 そうなっているというのだ。
「ならな」
「それがしもですか」
「茶をせよ、権六でもじゃ」
 織田家で武辺者として知られる彼でもというのだ。
「茶会を開いておるぞ」
「あの方もですか」
「わしが開くことを許すと大喜びしてな」
 そのうえでというのだ。
「度々開いておる」
「そうなのですか」
「権六は武辺じゃがあれで政もそれなりに出来てな」
 だからこそ信長も重く用いているのだ、戦だけの者ならば柴田の立場はより低いものになっていたことは間違いない。
「それで気遣いも出来てな」
「実はお優しいと聞いています」
「そうじゃ、困っている者を見捨てぬ」
「そうした方で」
「茶もじゃ」
 一見武骨な柴田には無縁でもというのだ。
「嗜んでいる、猿でもじゃ」
「羽柴殿もですか」
「百姓の出で元々縁はなかったが」
 それがというのだ。
「今ではじゃ」
「あの方もですか」
「茶の道に親しんでおる」
「そして茶器もですか」
「よいものを多く持っておるからな」
「それがしもまた」
「茶をせよ、利休にも会わせる」
 千利休、彼にもというのだ。
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