暁 〜小説投稿サイト〜
ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第24話 続き得た未来の可能性
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んは長期の依頼で当分帰ってこないって何日か前に言ったはずだけど?」

「……そうだっけ?」

 母親に言われたことだけでなく、父親の顔すらもあまり思い出せない自分に気づいて内心ビックリするエース。だが、それだけで終わるくらいにささやかなものでもあった。

「今日の朝もだったけど、エースボケてるわね。そんなんじゃ、ガールフレンドに迷惑かけるわよ」

「……善処します」

 そうは言ったが、なんとなくこれは自分がボケてるのではないような気がしていたエース。今日夢から帰還した後の。いくつかのやりとりにおける乖離が激しすぎて、これは何か別の理由があるように思える。

「あと、なんか顔つきが別人みたい。とんでもない生活をくぐり抜けて今がある、みたいな」

「なにその違い」

 周りとの違いに感づき始めた最中に投げかけられた母親のよく分からない表現に対して、エースは苦笑交じりに聞き返した。その間自己主張の激しくなった心の中のモヤモヤは、触れないままにしておくことにした。

「言葉では上手く言い表せないのだけど……まぁ、私の思い過ごしよね。ずっと憧れてた学校に入って、ガールフレンドも出来て、友達もいっぱい。とんでもない生活の要素がないものね。むしろ幸せいっぱいだもの」

「うん、そうだ──ってだからそこまで親しくないっての」

 だが、母親が何気なく言った言葉が、何故か鋭い槍のようになって突き刺さった。抱えたままだったモヤモヤが、何かに気づいて欲しいのか心の中の引っかかりを刺激してその存在をより示してきていた。

 しかし、そんな息子の心の内の微妙な変化を、母親が知るはずもない。もちろんエースも、理由の分からないそれを表に出すことはなかった。

「そろそろご飯だから、さっさと着替えてきなさい」

「りょーかい」

 そう言うと、エースはリビングから玄関へと向かう道の途中で反対に折れ、自分の部屋に向かった。

「……なんかモヤモヤする。自分を否定されるような、そんな気分」

 たどり着いた自室の中にある机の横にカバンを置き、窓の外を見ながらそう呟く。夢の中の自分がまさにそんな感じであったからなのか、それともまた別の原因があるのか。

「気のせいだよな。夢に引きずられ過ぎだ。そんな生活なんてないんだからさ。世の中そこまでひどくない」

 自分にそう言い聞かせるも結局モヤモヤを晴らすことが出来ず、心の中に抱えたままエースは食卓へと向かっていくしかなかった。

 その日の夕食は、好きなメニューのはずなのに、何故か美味しく感じられなかったのだった。
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