第二章
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おりましたので、今はもう動けるかと。」
それを聞くや、イェンゲンは医務室へと向かった。
だがイェンゲンが歩き始めるや、既に向こうからアデンが来ており、彼は直ぐにイェンゲンに気が付いて歩み寄った。
「イェンゲン…そちらはどうだった?」
「駄目だ。私も多くを逝かせてしまったよ…。だがな、私はこれから、あいつの率いる義勇団の元へ行こうと思っている。お前はどうする?」
「無論、同行させてもらう。逝かせた奴らの仇を討ちたいからな。」
二人は互いの意思を確認するや、そのまま移転の間へと向かって東の街へと飛んだのであった。
東の街の教会内…ここは敷地一体が聖性に守られているため、妖魔の手は及ばない。民は皆、ここへ避難しているが、間に合わなかった者も多かった…。
夕の押し迫る中、二人は防御魔術をその身に付して教会を出た。
外は静かであった。目の前にあるのは破壊された街並みと、グールの残していった人だったものの残骸だけであった。
そこには、凡そ<生>と云うものを見出すことが出来なかった。
「何処へ行った…?」
アデンがそう呟いた時、かなり南の方から大きな音が響いた。
「まさか…グールは王城へ向かっているのか!?」
アデンとイェンゲンは身を強張らせながらも、直ぐに教会へと踵を返し、再び移転の間から隣街の大聖堂へと飛んだ。
移転した直後、感知するまでもなく、外から多くの戦う者の声が聞こえてきた。
「後退しろ!ヤツは弱い心を見抜く!気圧されるな!」
それはルーファスの声だった。
二人は直ぐに大聖堂から出ると、そこには街の人々を庇いながら後退する義勇団の姿があった。
ルーファスと弱冠十六歳のヴィルベルトが強固な防御結界を構築しながら、人々を安全な場所へと誘っている。義勇団の面々は各々魔術で強化した弓矢や、魔術を付した投擲器などで妖魔とグールを足止めしようとしていた。
妖魔に魔術自体効き目は弱くとも、武器を強化した直接攻撃はかなり有効なのである。そのため、グールはアデンとイェンゲンの見ている前で目と耳をやられ、そして両膝を打ち砕かれて崩れたのであった。
「今の内に走れ!」
ルーファスはそう声を張り上げるや、続けざまに魔術でグールへと瓦礫を山と積み上げた。
「ヴィー、早く!」
「はい!」
ルーファスとヴィルベルトは義勇団と共に走って行くが、アデンとイェンゲンもハッと我に返り、直ぐに彼らの後を追ったのであった。
走る二人の後ろからグールの呻く声と、上に積み上げられた瓦礫を退かそうとする音が響く。
ー そうか…彼らはこうして足止めし、人々を…。 ー
イェンゲンだけでなく、他の隊の隊長らも皆、こう考えていた。
「ここで妖魔を倒せれば救われる。」
それ故、最初から人命優先だった義勇団とは違い
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