卑の意志なのか士郎くん!
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ことが可能だった。
現に俺の知る『衛宮士郎』は、アーチャーとの対決の中で加速度的に成長していた。あれは、アーチャーの戦闘技能を文字通り吸収していたからであり、同時にアーチャーの記憶をも見てしまっていたからだ。
言えるのは、あんな現象が起こるのは『衛宮士郎』と英霊エミヤだけということ。両者が、厳密には別人だったとしても、緊密な関係を持っていたからこそ起こった現象なのだ。
翻るに、この俺は『衛宮士郎』ではない。自分の名前が思い出せずとも。かつての自分が何者かわからずとも。俺は俺であり、俺以外の何者でもなかった。
だからあり得ないのだ。俺がアーチャーと――英霊エミヤと共鳴し、その記憶を垣間見ることになるなんてことは。
だってこれは、エミヤシロウ同士でないとあり得ないことで。それが起こるということは……?
……いや、まさか、そんな……。
俺は……『衛宮士郎』なのか……?
「貴様は……」
エミヤが、呆然とこちらを見ていた。
愕然と、信じられないものを見た、とでも言うかのように。
何を見た? 奴は、俺の何を見た。
「先輩! どうかされたんですか?! まさかアーチャーが魔術を使って……? ……先輩! しっかりしてください、先輩!」
「マシュ……」
虚ろな目で、マシュを見る。その目に、光が戻っていく。
……俺は、誰だ。
「マシュ、俺は、誰だ?」
「先輩は先輩です。それ以外の何者でもありません」
マシュの声は、全力で俺を肯定していた。
それに、勇気付けられる。そうだ、俺は俺だ。惑わされるな、俺は全知全能じゃない。知らないことだってある。むしろ知らないことばかりだ。
今、たまたま俺の知らない現象があった。それだけだ。何も変わらない。
意思を強く持て、何度も揺らぐな、ぶれるな。大人だろうが!
「……俺は、大丈夫だ。俺が俺である『証』は、ちゃんと俺の自我を証明しているはずだ。だから、大丈夫」
自分に言い聞かせる。そう、問題はない。
ふぅ、と息を吐き出し、アーチャーと相対する。
「ふざけるな……」
「……なに?」
「ふざけるな……! 衛宮士郎! 貴様はこれまで何をして生きてきた!?」
突如、アーチャーが激昂した。訳がわからない。いきなりどうしたと言うのだ。
マシュが警戒して前に出る。マシュの認識ではこのアーチャーはエミヤシロウでも、自分のマスターに怪しげな魔術を使ったかもしれない相手なのだ。警戒するな、という方が無理な相談である。
だが、そんなことなど気にもせず、アーチャーは握り締めた拳を震わせて、激情に歪む顔を隠しもせず、歯を剥いて吠え立てた。
「答えろ、貴様はどんな生涯を辿ってきた?!」
「……何を突然。答える義
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