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翠碧色の虹
第三十九幕:すれ違いの虹
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時崎「・・・なんて、ちょっと偉そうだったかな・・・ごめん」
笹夜「いえ。ありがとう・・・ございます・・・」
時崎「高月さん!」
笹夜「はい?」
時崎「あの時の演奏、聴いてみる?」
笹夜「はい♪ お願いします♪」

俺は、MyPadに転送しておいた、高月さんの即興演奏動画を再生した。演奏を聴いている高月さんは、少し恥ずかしそうだけど真剣な表情で動画を見つめていた。

時崎「手ぶれ多くてごめん」
笹夜「いえ。自分の演奏している姿を見ると少し恥ずかしいです」
時崎「あ、それ、分かるよ」
笹夜「でも、私が思っていた記憶と、細かな所で違いがありました」
時崎「この動画が参考になるかな?」
笹夜「はい♪ とっても参考になります♪」
時崎「もう一度、演奏する?」
笹夜「はい♪ お願いします♪」

演奏を聴きながら、高月さんの表情は次第に優しくなり、演奏そのものを楽しみ始めたように思えた。

時崎「高月さん!」
笹夜「はい!?」
時崎「この動画、送るよ!」
笹夜「え!?」
時崎「高月さんの携帯端末に!」
笹夜「え!? あ、ありがとうございます♪」

俺は高月さんの携帯端末へ動画を転送する。

時崎「上手く届いたかな?」
笹夜「はい♪」
時崎「俺に出来る事ってこのくらいしかないから」
笹夜「とても大切な『このくらい』です♪」
時崎「え!?」
笹夜「時崎さん」
時崎「?」
笹夜「時崎さんは、虹の撮影で、この街に来られたのでしたでしょうか?」
時崎「あ、ああ」
笹夜「昨日、大きな虹が架かってました」
時崎「!!!」
笹夜「私の家から、この街まで・・・」
時崎「・・・・・」

真剣な表情で俺を見ている高月さん。俺の心にその視線が鋭く刺さってくるようで、高月さんの顔が見れなくなっていた。何かを読み取られるような感覚。どうすればいい?

笹夜「見えませんか?」
時崎「っ!!!」

昨日の七夏ちゃんと同じ事を聞かれた。けど、高月さんは空ではなく、自分の髪の半分を掻きあげる。その髪はさらさらと手から滑り始め、扇子のように広がりを見せた。

時崎「あっ!」

その髪の扇子に陽の光があたり、虹が浮かびあがっていた。とても美しく儚い虹。さっきと違って今度は高月さんを凝視してしまう。高月さんの手から髪は全て滑り落ち、虹もすぐに消えてしまった。

笹夜「私、この髪、あまり好きではなくて・・・」
時崎「どうして?」
笹夜「いつも最初に髪の事を言われるから・・・」

高月さんの気持ちは分かる。

時崎「高月さんの心が髪で霞むからかな?」
笹夜「・・・七夏ちゃん」
時崎「え!?」
笹夜「七夏ちゃんは、話してこなかったの」
時崎「!」
笹夜「でも、七夏ちゃんには、見えて
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