第三十九幕:すれ違いの虹
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しましたから」
時崎「アルバム・・・」
笹夜「時崎さんと七夏ちゃん・・・沢山の色々な思い出が必要だと思って・・・」
時崎「ありがとう。高月さん」
高月さんが俺に話したい事・・・お礼って、ランドロー社の方との繋がりという事か。でも、その為に、わざわざ俺の所まで訪ねてくるだろうか?
笹夜「私、その販売員のお方とお話している流れで、電子ピアノ用のデモ音楽を作ってみませんかって」
時崎「え!? それって凄い事では?」
笹夜「はい。私も驚いて・・・あの時の演奏、販売員さんの方がとても気に入ってくれて」
時崎「とっても良かったよ」
笹夜「でも・・・」
時崎「高月さん?」
笹夜「即興演奏って、その時にその場で作りながら演奏しますので、後で全く同じ演奏が出来ないのです。家で思い出しながら弾いてみるのですけど、あの時と違う気がして・・・」
俺は、高月さんの力になれると思った。
時崎「高月さん!」
笹夜「は、はい!?」
時崎「あの時の高月さんの演奏、録画してるから、それを聴けばいいと思う」
笹夜「録画・・・まだ残ってますか?」
時崎「もちろん! 消すはずないよ!」
笹夜「ありがとうございます。でも、私・・・」
時崎「どうしたの?」
笹夜「音感が鋭くなくて・・・聴いても分かるかしら?」
時崎「おんかん?」
笹夜「私、『絶対音感』を持っていなくて・・・」
時崎「絶対音感?」
笹夜「例えば『ラ』の音を鳴らした時に、それが『ラ』だと分かる事です」
時崎「音当てクイズみたいなイメージかな?」
笹夜「はい。美夜は絶対音感を持ってるのに、どおして私は・・・」
時崎「みや?」
笹夜「あ、すみません、私の妹です」
時崎「高月さん、妹さんが居たんだ」
笹夜「はい。絶対音感は、幼い頃にしか習得できないみたいで、私は少し遅かったみたいです」
時崎「そう・・・なんだ」
笹夜「私がピアノを弾いているのを傍で聴いていた美夜は、自然と絶対音感を身に付けていて・・・でも、美夜はピアノには全然興味がないみたいで・・・」
時崎「興味の対象は人それぞれだから」
笹夜「はい。 絶対音感のない私が、電子ピアノのデモ音楽を担当してよいのかしら?」
時崎「いいと思う!」
笹夜「え!?」
俺は迷わず即答した。
時崎「高月さんの演奏は、ピアノの事がよく分からない俺でもとても良かったと思ったし、ランドロー社の方も良いって話してくれて今がある訳でしょ?」
笹夜「・・・・・」
時崎「見えない、分からないっていう事は、それが分かる人では味わえない事で、その多くは、優しさや思いやりに繋がってゆくのだと俺は思うよ」
笹夜「・・・・・時崎さん・・・・・」
高月さんは、音が良く見えない・・・これって七夏ちゃんと重なる部分があると思った
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