普通に死にかける士郎くん!
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界のことも話してあげよう。彼女の生きる世界は、決してカルデアだけで完結するものじゃないんだと、いつか証明できるようにしよう』
『……それは……』
『ああ。それはとても素敵なことだと俺は思う。不可能ではない。俺はそう信じる』
『……そう、だね。その通りだ』
『ロマニ。俺はね、出来ることはなんでもしてきた。それだけが俺の行動理念だった。……今回もそうだ。出来ることをする、それだけだよ』
――そう。出来ることをする。死なないために、生きるために。
自分の命を軽く見ることはないが、逆に固執しすぎることもない。思いすぎればそれは呪いとなり、俺はいつしか生に執着するだけの亡霊となるだろう。
それは嫌だ。だから俺は俺という人間を全うするだけである。そしてそのためなら、俺は俺の全能力を躊躇いなく費やすだろう。
俺という人間、その自我、自意識だけが俺の持つアイデンティティーだから。名前も体もなくし、赤の他人として生きねばならなくなったあの日から、俺はいつしか俺だけのために、俺の信条だけに肩入れして生きていこうと決めていた。
「……」
美味しいお菓子と、日本ではあり触れた漫画やアニメ、それの内容を語って聞かせるだけで、マシュは大袈裟に驚き、大真面目に感動し、真摯に涙した。
感情が豊かなのもある、だがそれ以上にマシュは何も知らなさすぎた。
カルデアに来て、マシュと同じA班に配属されて出会ってから、俺は彼女に積極的に話し掛け続けた。俺の知っていることをなんでも教えてあげた。それは、俺が彼女と似た境遇の血の繋がらない姉を知っていたからこその接し方だったのかもしれない。
ただの欺瞞なのかもしれない。だが、それでいいと俺は思う。
どんな思いがあっても、マシュがどう感じ、何を信じるかは自由だ。マシュが何を思うかが大切なのだ。そこに俺の感情などが差し込まれる余地はない、所詮は雑念にしかならない。
この広く、暗く、薄汚れた大人たちの世界では、正直マシュや義姉の境遇は珍しいものではないだろう。似たような環境で、より過酷な世界で育った子供を俺は何人も知っている。そして、そんな子供たちをよく知っているからこそ――そういう子供たちを保護し、接してきたからこそ。俺はそういったものに敏感で在り続けたいと思っている。
何も感じないほど鈍感になってしまえばどんなにか楽だろうが、そんなものは糞くらえだ。子供たちの悲劇に敏感で在れ。安い同情でも良い、動機なんてなんでも良い、実際に行動した者こそが正義だ。綺麗事を囀ずり非難するだけの輩の言葉に耳を傾ける価値はない。やらない善よりやる偽善、それが本物の善だと俺は信じている。
俺の知るアニメソング、一世を風靡した名曲
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