第二十五話 天下の政その十
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「出されるべきです」
「では於次丸か」
「ですな、あの方はお身体も丈夫なので」
「若くして病に倒れることもない」
「ですから」
「あ奴の家にするか」
「それが宜しいかと」
こう信長に話した。
「この度は」
「わかった、ではな」
「その様にされるとよいかと」
「では爺の言う通りにしよう」
信長は平手に確かな顔で頷いて応えた。
「家の今後のことはな」
「その様に」
「わしと勘十郎に何かあった時勘十郎に子がなければ」
その時のこともだ、信長は話した。
「間違っても茶筅にはな」
「大事はですな」
「任せぬことじゃ、これは言っておくぞ」
「わかり申した」
「お主と勘十郎、そして猿夜叉に告げておこう」
とりわけ信頼出来る者達にというのだ。
「そうしておく、しかしな」
「しかしとは」
「どうも猿には話さぬ方がいいな」
羽柴にはというのだ。
「あ奴は天下が手に届けば掴むであろう」
「そうした者でしょうか」
「わしはそう思う、だからな」
「猿にはこのことは話しませぬか」
「お主達だけに話す、間違ってもな」
「茶筅様にはですか」
「大事はさせぬ」
決して、という言葉だった。
「何があろうともな」
「若し預けると」
「その時は何をしでかすかわからぬ」
「それ故に」
「それはさせぬ」
家の為にというのだ。
「さもないと家を大きく過つ」
「天下も」
「ならば最初からさせぬ」
過つ前にというのだ。
「よいな、そのことは」
「さすれば」
「あ奴は家だけの者になってもらう」
「お子をもうけてもらう」
「それだけの者じゃ、あの器ではな」
どうにもというのだ。
「そうする、ではな」
「はい、それではそれがしは」
「家のことも頼むぞ、これからも」
「わかり申した」
確かな声でだ、平手は信長に応えた。そうしてだった。
その話の後でだ、平手は羽柴のことを話した。先程手が届けば天下をも掴むと信長が言った彼である。
「それで猿ですが」
「今言ったな」
「若し手が届けばですか」
「あ奴は天下を手に取る、そしてじゃ」
「天下人としてですか」
「天下を治めるわ」
そうするというのだ。
「あ奴はな」
「まさかと思いますが」
「いや、わしへの忠義はあるがな」
「天下への野心はですか」
「抱けるならな」
「抱く者ですか」
「当家でそうした者はおらぬ」
羽柴の他にはというのだ。
「誰もな」
「はい、権六も他の者達も」
「十兵衛にしてもな」
「左様ですな」
「しかしじゃ」
それでもというのだ。
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