第二章
V
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ルーファスらが魔術で王都へ向かった時、マルクアーンもエリーザベトとクリストフを引き連れて宿を出ていた。真夜中ではあるが、この宿は酒場も兼ねているため客足は多く、馬車も直ぐに手配出来た。
三人はその馬車に荷物を積み込むや、慌ただしく出発したのであった。
「賢者様。この国は一体…どうなるのでしょう…。」
馬車に揺られながら、エリーザベトは不安そうにマルクアーンへと問った。その隣では、クリストフが蒼い顔をして黙している。
「さてのぅ…。少なくとも、ルーファスらが上手く立ち回れば、新王選出まで漕ぎ着けるだろうが、そうでなくば…些か面倒なことになるやも知れんな。」
「それって…。」
蒼褪めた顔でクリストフが聞く。だが、マルクアーンはそれに答えようとはせず、二人へと少しばかり強い口調で言った。
「お前達、このままコレンテ公の館へ連れて行く故、直ぐにこの国から出国しろ。」
そう言われた二人は、体を強張らせて彼女を見た。二人は、自分達が思っている以上に事が切迫していることを悟り、これ以上は問えなくなった。
貴族とは言え、ここは他国…二人には何の力もないのである。故に、二人はマルクアーンの言葉に従い、コレンテ公の館へ着くや事情を話し、公に仕える魔術師の力を借りて出国したのであった。
二人を送って後、マルクアーンはコレンテ公の計らいで、そのまま魔術にて旧友の館へと向かった。
「シヴィル、よく来たな。生憎、この様な姿で済まんがな。」
「別に構わんよ。そんな事を気にする仲でもあるまいて。」
ここはシュトゥフの寝室である。彼は起き上がることも儘ならず、マルクアーンはベッドの脇に椅子を置いて座っている。
開かれた窓から光が注ぎ、心地好い風が入ってくるが…。
「しかし、お前が病に倒れるとはのぅ…。」
「言うな…儂も歳だと言う事だ。若い時分には、こうなろうとは思ってもみなかったがな。」
「人とはそんなものだろう。少し前にはファルが逝ってしまったしのぅ…。」
「そうだったな…。時とは足早に過ぎ去る幻影の様なもの。こればかりは自然の摂理だからな…。」
二人は暫く、在りし日を思い出していた。
遠い昔、この二人を含む五人組は、野山を駆けて妖魔を倒し続けていた。五人の思いは皆同じであった。この大陸に幸福を取り戻す…その強い思いが五人を繋ぎ留めていた。
「シヴィル…あの時は済まなんだ…儂が外したばかりに…。」
「その話は、もう良いではないか。わしが今、こうしてお前に会いに来れるのは、それがあったからだ。そんな事よりも、今はこの国の事じゃないか?」
「そうだな…。だが如何せん、この躰ではのぅ…。」
シュトゥフは弱々しい笑みを浮かべてマルクアーンを見た。
そんなシュトゥフに、マルクアーンは懐から何かを取り出して渡した。
「こ
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