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魔術師ルー&ヴィー
第二章
V
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「それでは駄目なのだよ。」
「シヴィル…まだあの事を…。」
 二人はそれ以上何も言わなかった。
 あの事…とは、シヴィルが守れなかったとある青年の話。
 彼とマルクアーンは親友であり、切磋琢磨出来る好敵手であり…姉の夫でもあった。しかし、マルクアーンはその彼に…友情以上の感情を持ってしまったのである。
 それ故…彼の死を止めることが出来なかったのである。
 マルクアーンはそれを悔やみ続け、もうその様なことがないよう、自らの心…想いを封じる道を選んだ。これを知るのは、五人組の仲間とコアイギスだけである。
「わしはな…あやつの罪を葬るために来た。」
「まさか…あの封を破るつもりか?」
「いや、最早破るまでもない。あの封は既に綻びかけておった。それを…何者かが破りおったのだ。それ故、この国の安定は妨げられておるのだ。」
「星読みか…?」
「そうだ。元来は時を正確に計るためのものだが、わしはそこに凶兆を見つけたのだ。わしは…それを阻止したいのだ。」
「全く…本当に変わらんな。及ばずながら、この爺も助力する故、先ずは腹ごしらえだ。食わねば力も出ぬからのぅ。」
 そう言って豪快に笑い食事を進めるシュトゥフに、マルクアーンは苦笑して返す。
「色気より食い気だったから、あやつに振られたのだろ?」
「煩いのぅ。もうそれは良いから…。」
 マルクアーンの言葉に、今度はシュトゥフが苦笑するほかなかった。マルクアーンもしてやったりの笑みを見せ、その食卓を潤わせたのであった。
 だが、その夜。シュトゥフが偵察に向かわせていた二人の魔術師が、とんでもない情報を齎したのである。
「旦那様、一大事に御座います!」
「どうしたと言うのだ?お前が合図もせず入ってくるとは。」
 ノックも無しに入って来たのはルークであった。余程急いで戻ったのか、些か息も上がっている様子である。
 そこにはマルクアーンもおり、シュトゥフと二人で今後どう動くかを決めていたのであるが、ただならぬ様子に二人はルークの元へと歩み寄った。
 少しだけ息を整えて後、ルークは二人へと告げた。
「旦那様、王都が妖魔の襲撃を受けております!只今魔術師達が総員で戦っておりますが、かなりの死者が出ているとのこと。」
「何じゃと!?この島国に、妖魔がそこまで力を維持出来る魔力は残っておらん筈じゃ!」
「ですが、何か別の力が作用していると思われるとのこと。アーダルベルト・フォン・シュテンダー様によると、魔晶石か、またはそれに準ずる魔具があるのではないかと。」
「お前、ルーファスに会ったのか?」
 その話に、マルクアーンは目を見開いて問った。すると、ルークは神妙な面持ちで返した。
「はい。彼は王都を守るため、弟子のヴィルベルト様と戦っておいでです。もしお二方がいらっしゃらなかったら、王
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