第二章
V
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れは?」
「わしが調合した丸薬だ。病を完全に治せなくとも、気力と体力を回復させる位は出来る。まぁ、若い頃の様な無理は出来ぬが、出歩く事は充分出来よう。」
そう言われたシュトゥフは、袋から丸薬を一粒取り出して口に入れた。
「随分苦いな…。」
「子供の様な事を言うでないわ!全く…あの頃と何も変わらんな。」
顔を顰めるシュトゥフに、マルクアーンはそう言って笑った。
暫くすると、何を思ったか…シュトゥフはベッドから起き上がって言った。
「こりゃ…本当に良ぅ効くのぅ…。」
「そうであろう?ま、一日一粒が限度ではあるが、それでも効力は充分な筈だ。さて…どう動く?」
立ち上がって背伸びをするシュトゥフを見て、マルクアーンは苦笑混じりにそう言った。
「そうさのぅ…ここからでは王都まで丸2日は掛かる。夜は動かぬ方が懸命…とならば、明朝の出発が良かろうて。尤も、この老い耄れに何が出来るか分からんが、もう一花咲かせて逝こうぞ。」
「その意気じゃ。」
二人は笑い合った。それは在りし日の幻影やも知れないが、今の二人には、その時の熱意が湧き上がっていたのであった。
マルクアーンが自身が作った禁を破ってでもここまで来た理由…それは、この禍を事前に知っていたからである。
彼女が〈大賢者〉と呼ばれる理由の一つとして、先を見通す星読みを得意としていることが挙げられる。先を読んで先手を打つことで、人災天災に関わらず、それを出来うる限り最小限に留めることが出来るのである。
三月前、彼女は忌み星を見た。それはこの大陸全土に再び災厄が齎される前兆であり、その始まりは大神官ファルケルの死から始まったとされる。
故に、マルクアーンは禁を破ってまで、自らが出来うることを遣りに塔を出て、こうして昔馴染みの戦友に会いに来たのであった。
だが、シュトゥフもそれには薄々気付いてはいた。彼女が自ら動くという意味…それこそが、災厄が近いと言う証拠なのだと。
「シヴィル。この事をクリスティーナとトリュッツェルにも伝えてあるのか?」
「書簡で伝えてある。これから起こり得る全ての事を認めた。先ずは此処から…と言うことだ。」
それを聞くや、シュトゥフは手を叩いて人を呼んだ。
「旦那様、お呼びでしょうか?」
直ぐ様扉を開いて入って来たのは、未だ十代であろう少年であった。
「ルーク、スランジェと共に、出来る限り国の状況を調べ上げてこい。期限は夜明け前までだ。」
「畏まりました。直ぐに出発致します。」
ルークと呼ばれた少年はそう言うや、そのまま部屋から出て行った。
「あの少年は何だ?お前…ああいうのが好みか?」
「勘違いするでない!ありゃ、うちの魔術師だ。ああ見えて中々腕が立つ。お前のお気に入りであるルーファスには敵わんがな。」
「ま、そうであろうな。
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