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泡沫の島
泡沫の島 5話「ルナ」
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たみたい。

 歌を歌っているときは、自分が別の自分になったような不思議な気分になれる。

 私の歌のレパートリーは少ない。そもそもずっと閉じ込められていたから、音楽を聴くことなんてほとんど無かった。私が歌っている曲は、施設の職員が聞いていたラジオから流れてきた、どこかの外国の曲だけ。
一所懸命耳を澄まして何度も何度も繰り返し聞いて覚えたのだが、歌詞が合っているのかどうかは自信がない。

 ユキが、なら今度ラジオ作ってあげますよ、とか言ってたけど、ラジオってそんなに簡単に作れるものなんだろうか?とても楽しみだ。

 ……知らないうちに小鳥さんや猫さんやリスさんがやって来ていた。嬉しくなって私はもっと歌う。

 

 時間を忘れて歌い続けていたが、その時、がさ、という不協和音が聞こえる。

 私は反射的に身を竦める。施設の連中かもしれないからだ。

 しかし、その音を立てた張本人は私のよく知る人物で、彼は申し訳なさそうな顔を浮かべながら

 「ごめん、邪魔しちゃったね。」

 と、微笑んだ。
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