泡沫の島 3話「カズ」
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あの頃の俺は、今以上にバカだった。
施設の中でも俺は飛び抜けて良い成績を残していたし(頭を使うのはあまり良くはなかったが)、他の奴等なんかよりも自分は特別だと常に思っていた。
過酷な訓練や極度に制限された自由の中で、自分が他の奴よりも優れているという優越感だけが俺にとっての目標であり、全てだった。
施設での基本的な日程は、午前中に全員で基礎訓練を行い、午後には担当官の指導の元、似た系統の能力者を選り分けてグループごとに訓練を行う。
当然そのグループでも俺は突出しており、リーダーのような役割も任されていた。
そんな日が続いた頃、俺は今居る施設から別の施設に転属命令が出る。
「遺伝子学研究施設第13施設」…そこは、優秀な能力者だけが転属を許される、言わばエリート専用の施設だった。
そこに居る奴らもさすがにレベルが高い能力者ばかりだった。部分的に見れば俺よりも強い奴も居たし、頭が切れる奴も居た。
しかし俺は、こと格闘戦だけなら誰にも引けを取らなかった。自然、戦闘能力に特化したグループのリーダーとなる。
しばらくして俺は『狂犬』と呼ばれるようになった。別段その呼び名も嫌いでは無かったし、何より俺自身の実力を認めた上での名前だと思ったからむしろ誇りに思っていたときもあった。
そんな新しい施設での生活にも慣れて来た頃、ある噂が立った。
「……おい聞いたか?今度やってくる奴、かなりやばい奴らしいぜ…。」
「やばいって何がだよ?強いってことか?」
「いや、俺も詳しくは知らないんだけどよ、何でも、過去に暴れて、そん時は施設の教官全員掛かりでやっと抑えたらしいぜ…。」
「暴れたぁ!?随分バカな奴だな。暴れたところでここから逃げ出せるはずはねぇのに。」
「いや、でもよ?そん時止めに入った生徒や教官の半数以上が重傷で、死んだ奴も結構いるらしいんだ。」
「……マジでか?そんな狂暴な野郎が来るのかよ…。」
「あくまで噂だけどな。だけど、そんな奴が来たら、ウチのリーダーと一悶着…」
「俺が、どうしたって?」
俺が声を掛けると話していた二人が飛び上がって思いっきり後ろに下がった。
「カ、カズさん!」
「ったく。どいつもこいつも…。んな噂、色々尾ひれが付いてるに決まってるじゃねーか。あーくだらねぇ。」
「……で、でも…。」
「仮によ。その噂が本当だったとして、テメェらはこの俺よりも強えかも、とか思ってやがんのか?あ゛ぁ?」
「い、いえ、決してそんな事は…。」
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