泡沫の島 3話「カズ」
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「あー、かったり。ったく、面倒くせぇなぁ。」
何度目かの文句を言いながら、俺はトラップを仕掛ける。
始まりは二日目の夜、シュウが「用心のためこの島の周りにトラップを張ろう。」と、言い出してからだ。あんときは軽い気持ちで引き受けちまったが、あれから既に一週間、今はマジで後悔している。
「……面倒くせぇ。」
つーか、納得いかねぇ。何で二人だけでこの島全体に仕掛けなきゃなんねーんだ…。あいつらはどうした。あいつらは。
「力仕事ってやっぱり男がやるもんじゃない?」
「っておい!そんなんが理由かよ!?」
「立派な理由でしょ。労働は財産だよ?」
「待て!待て待て!ユキの野郎は料理やってるからいいとして、後の二人は大してなんもやってねぇだろ!」
「……私、野郎じゃありませんが。」
「ひどいなぁカズ。彼女達だって食料探してもらったり色々仕事してもらってるんだよ?」
「ぐっ…!だ、だけどよ、こっちの方にもっと人員を割くべきだろうがよ!島中を二人だなんて、一体何日掛かるんだよ!?」
「……はぁ。しょうがないな。あまり、こういうことは言いたくないんだけど…。」
「あん?何だよ?」
「手伝ってもらうとして、ルナやサヤに一人でトラップを張ることが出来ると思う?」
「…………。」
イメージする。頭に浮かぶのは、トラップの材料を手にしたままどうしたらいいか分からず固まっているルナと、仕掛けるどころか自分で他のトラップに掛かって宙ぶらりんになっているサヤの姿。
「…………。」
「ね?」
「…………あぁ、わかった、わかったよ!例え何日掛かろうが、仕掛けまくってやろうじゃねぇか!やりゃいいんだろ!?クソッタレ!」
「やる気を出してくれて嬉しいなぁ。大丈夫。二人でやれば一週間も掛からないさ。……たぶん。」
「……あの嘘吐き野郎が…。」
すでに始めてから一週間が経つ。あの野郎…騙しやがったな…。
「…………あぁあもう面倒くせぇ!休憩だ休憩!」
俺は適当に座る場所を見つけて腰を下ろした。
この一週間の成果もあり、後俺がやる所は二、三個所だけだ。おそらく今日の昼前までには終わるだろうから、ここで少し休んだって罰は当たらんだろう。つぅか、誰にも文句は言わせねぇ。
「……ふー…。」
疲れた。マジ疲れた。あー水持ってくりゃ良かったなー。
俺は思わず上体を逸らし空を仰ぎ見る。
しばらくそうしながら、何となく昔のことを思い出していた。
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