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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 14
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を当ててニヤニヤと笑うプリシラに、さっきまでの自身の言動で足を掬われ、たじろぐマイク。
 そんなマイクにトドメを刺したのは。
 プリシラの肩にすがりついたまま、きょとんとした表情で首を傾げているミネットだった。

「まいく、うそ、ついてたの?」
「! や、ミネット、ちが……っ」

 じりりと一歩下がるマイク。
 ミネットは、無垢そのもののまっすぐな眼差しでマイクを見据え。
 ピシャリと言い放った。

「……まいく。うそついたら、めっ!」

「う…………うわああああああああああああああん!」

 間を置いて続々と表に姿を見せ始めた孤児達の隙間を器用にすり抜け。
 たった一人、全力で屋内へと引き返していく傷心の少年、マイク。
 その小さな背中を見送るプリシラは、勝利の余韻に浸り、実に満足そうな笑みを浮かべていた。

「ふっ。愚かな。私をおちょくろうなど、五十年早いのよ!」

 一部始終を横目に見ながら、荷物の運び出しを始めていた偽装聖職者達は

(次期大司教様、大人げない……)

 と、心の中だけで斉唱する。

「まいく……なんで、あやまらないの? うそついたりしたら、ちゃんと、ごめんなさい、しなきゃだめなのに……」
「み……、ぷりぃー……」

 発展途上にある男心の繊細な部分を知らない幼女が悲し気にうつむくと、言葉を上手く操れないらしいキースが、慌てた様子でミネットとプリシラを交互に窺う。
 彼は彼で、喧嘩は良くないと言いたげだ。

 プリシラは再度キースの肩を優しく叩き。
 愛らしい少年少女にウィンクを贈った。

「良いのよ、ミネット。マイクは何も言わないで帰っちゃったでしょう? あれは『自分が悪いことをしました、全部自分が悪いんです』って意味で、たくさんの人が見ている前でやると、すっっごく、恥ずかしいことなのよ。ああなった時点でマイクはもう、しっかり罰を受けているの」
「でも、ごめんなさいしてないよ? ごめんなさいは、ちゃんとしないと、だめなんだよ?」
「そうね……。マイクは嘘を吐いたのに、ごめんなさいをしなかったから、とーっても悪い子ね。ミネット、悪い子は好き? 嫌い?」
「まいくは、みねっとのきらいと、ちがうけど。わるいのは、よくないよ。みねっと、わるいのはきらい!」
「じゃあそれを、今からマイクに言ってきてくれる?」
「? わるいのはきらいって、みねっとが、まいくに、いいにいくの?」
「ええお願い。プリシラ様にごめんなさいをするまで、ミネットは悪い子のマイクが大嫌い! って、マイクに伝えてきて欲しいの」

 傷付いた少年の心を間接攻撃で更に抉る、えげつない次期大司教。
 そこに『容』と『赦』の二文字は存在しない。

「んー……わかった! いってくるね!」

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