純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 14
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を利用すると決めた直後のプリシラ本人だった。
いや、彼女としては、視察の口実を得る為に「ちょっとした興奮状態になって子供達の前で目眩でも起こしてくれれば良いなぁ」と考えていただけで、本気でこんなに長時間ひっくり返させるつもりは毛頭無かったのだが。
神父達はプリシラが想像していた以上に清純だったらしい。
「はっ……そのクセ、私がどんなに誘いかけても眉一つ動かさないんだもの。つまらないったらありゃしない」
「残念ね? 私から手駒を奪えなくて」
「ふん。他の女に溺れてる童貞男なんて、もう要らないわ。その代わり……」
女性の空いている手がプリシラの形良い顎を、薄い唇がプリシラの耳を妖しく撫でる。
「今夜は、楽しませてくれるんでしょう?」
聴く者の心を掻き乱す、女性の濡れた声色に
「ふふ。そうね……楽しめると良いわね? お互いに」
プリシラも心底愉しそうな笑みを浮かべ、自身の肩を抱く女性の腕に指先を添わせた。
頼りなく揺れる燭台の光を浴びて絡み合う、冷たい夜空と冴えた月。
二人の唇が呼気の熱を交わす距離にまで迫り
「ん……、……ぅぐはぁっ!?」
「「あ」」
二人の話し声で目が覚めたらしい、神父の間抜けな悲鳴を聞いて離れる。
部屋の奥、二人の正面から勢いよく飛び散る水粒。
起き上がった直後に再びベッドへ沈んだ神父を二人揃って覗き込んでみれば、彼は口を開いたまま白目を剥いてぴくぴくと痙攣していた。
その姿はまるで、壁に叩き付けられた蠅。
哀れさより先に気持ち悪さを感じてしまうのは、顔半分をだくだくと流れ続ける鼻血で汚しながらも幸せそうに薄っすら笑っているからだろうか。
「「……………………。」」
何とも言い難い微妙な空気と、錆の臭いが微かに漂う薄暗い室内。
女性二人は無言で互いの顔を見つめ合い……
「私は皆と食事してくるから。後始末をお願いね、先生」
にっこり笑った次期大司教が、素早く扉を開いて一歩外に出た。出遅れた女性は苦々しい表情で腕を組み、盛大に溜め息を吐く。
「貴女、本当にイイ性格してるわよね。プリシラ次期大司教サマ」
「ありがとう。褒められて伸びる私を、今後共よろしくね」
物言わぬ男衆の真ん中に女性だけを残し、ひらひらと手を振って境界線を閉じるプリシラ。
やや間を置いて内側から聞こえてきたバサ、バサ、と布団を振り払う音に唇の端を持ち上げて、自身は上って来た階段を悠々と下る。
女性に触れられた耳を、摘まんだ袖口で拭いながら。
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