ターン2 魔界の劇団、開演
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を自覚する。無理もない、なにせいきなり目の前で大人しくカードを見ていた相手が唐突に叫びだしたのだ。しかし、鳥居はそんなことで止まらない。これこそが、彼の長年かけて培ってきたスタイルだった。
鳥居浄瑠。彼は元々、プロデュエリストだったわけではない。彼の青春は演劇と共にあり、学生時代からとある劇団に所属していた。そこで彼らの最も得意としていた演目が、デュエルモンスターズを演劇に取り込み、デュエルを通じてストーリーを紡ぐ独自のスタイルである。ソリッドビジョンと舞台装置を駆使し、演者の動きとモンスターの攻撃や効果、そして魔法や罠の使用タイミングを正確に計ることでさもカードに命が宿ったかのように見せつけるその演目は評価も高く、小規模ながらに決して無視できない存在感を放っていた。
しかし、そんな彼の生活を一転させる出来事が起こる。ブレイクビジョン……「BV」開発着手の知らせである。今となっては思い出すたびに当時の自分への怒りすら湧いてくるが、当時の彼は質量をもつソリッドビジョンとの知らせに対し本気で喜んでいた。モンスターに、魔法に、罠に触れることができるのならば、ワイヤーアクションに頼らずとも龍の背に乗り空を舞うことができる。舞台上に限るとはいえ地を駆けることも、水に潜ることも思いのままだ。背景に使うフィールド魔法も、当然そのリアリティが増すだろう。ある意味で彼らは、「BV」の開発者が当時掲げていた理想に最も近い位置にいたといえたのかもしれない。
「『準備はよろしいですね?それではお客様、これより開幕のお時間です』」
その結末が、今だ。彼の居場所を、追っていた夢を、その同志さえも全てを奪われ、デュエルモンスターズそのものへのバッシングを受けて劇団は離散。どん底に落ちてなおデュエルに魅入られ、どうしてもカードを捨てきれなかった彼が最後に選んだ道が、デュエルポリスへの就職だった。
「『レフトPゾーンに手札から、魔界劇団−エキストラをセッティング。そしてペンデュラム効果により、相手フィールドにモンスターが存在することでこのカードを特殊召喚できます』」
魔界劇団−エキストラ 攻100
芝居がかった口調を維持しながらも左下、魔法罠ゾーンの端に置いたエキストラのカードを確認させ、手を添えてその真上のモンスターゾーンに攻撃表示で移動させる。この時、兜は1つの決断を迫られた。特殊召喚を通したこの瞬間、究極伝導恐獣のモンスター効果……すなわち自らの手札、フィールドのモンスターを1体破壊することで相手フィールドのモンスター全てを裏側守備表示とする効果を使うか否かである。
兜はまだ、鳥居のデッキ内容を知らない。エキストラ自体はその名の示す通り自身のカテゴリである【魔界劇団】での使用が一般的だが、その汎用性の高いペンデュラム効果
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