ターン2 魔界の劇団、開演
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った。裏デュエルコロシアムでいい戦績を叩き出したとなれば、当然優秀なデュエリストを囲い込みたいその筋からの勧誘も見えてくる。向こう見ずな若者ならば誰もが1度は夢見る一攫千金のビジョン、おおかたそのたぐいだと思ったのだろう。大概そんな甘い考えでデュエルの世界に足を踏み入れるものはカードを手に取る前に門前払いを喰らうのがオチだが、今回は鳥居が主導権を握っている以上そうもいかない。
そして悩むこと数分、ようやく中年男の唇が動いた。
「わかった。だが、私としてもこの場での一存で結論を出すことはできない。確かに参加者についてはある程度の裁量が私にもあるが、それ相応の実力者でなければ疑われるのは推薦する私なんだ」
「なるほど。下手に目を付けられるぐらいなら、私に屈した方がマシだと」
「そういうことだ。だが、それもできれば避けたい。君も、一旗揚げるために私のところに来たのだろう?それを無下にはしたくない」
神妙な顔で大真面目に子供のようなことを口にする兜に、つい鳥居の口元が小さく緩む。大義があるとはいえ、彼のしていることは犯罪すれすれの脅迫まがいの行為だ。にもかかわらず、この男はその彼の思いを無下にしたくないなどとのたまう。こうしてわずかに会話しているだけでも伝わってくるお人よしの気配に、それこそがこの男に一代で財を成させた何よりの理由なのだろう、そんな考えも頭をよぎった。そして何かを決心したかのように、兜がその頭をあげる。
「よしわかった、ではこうしよう。私と君で、今からデュエルを行おう。君が勝てばそれでよし、私が勝てば推薦はできない。それでどうだろうか」
「……いいでしょう。その話、乗りましたよ」
即答する。目の前の男が本人もデュエリストであるのはやや意外だったが、そうでなければこんな危ない橋を渡るほどデュエルモンスターズに入れ込みはしないだろう。
「あいにく、数年前に無許可での所持が見つかって以降デュエルディスクの取得許可がまだ下りていなくてね。ブレイクビジョン・システムなど組み込まれていないと言ったのだが……いや、愚痴になってしまったね。ともかく、ソリッドビジョン抜きでいいだろうか」
ソリッドビジョン抜き。デュエルモンスターズの原点に戻った、机なり床なりにカードを置いて行う純粋なカードゲームとしてのプレイのことだ。立体化されるカードの迫力もなければデュエルディスクによる半自動処理も行われないが、その飾り気のない遊び方は1周回って根強い妙な人気のあるスタイルでもある。立ち上がった兜が部屋の端の戸棚に行き、その中から40枚のカードの束を取り出すと、鳥居もまた肌身離さず身に着けているホルスターから愛用のデッキを引っ張り出した。机を挟んで向かい合い、相手のデッキをカットしたのちそれぞれが自身から見て右下にそれを置く。
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