暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン2 魔界の劇団、開演
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なのは彼がこうしてこの男と接触できるか否かのみであり、たった今その目的は達成された。
 握手しながらも、気取られない程度に左右に目を走らせる鳥居。彼の視界内に、家族や家政婦といったこの会話を覗く相手は存在しない。
 ……仕事の、時間だ。

「さて、兜さん」
「なんだい?なにぶん自分の伝記なんて作るのは初めてでね、まだよく勝手がわからないんだ。それで……」
「2日後……ちょうど10日ですね、そこの午前0時」

 ピクリ、と中年の眉が動いた。わずかな沈黙を経て取り繕うようにぎこちない笑顔を浮かべたが、鳥居に言わせればその演技の素人臭い青さは誤魔化しきれていない。普段からあまり嘘をつきなれていない人畜無害なタイプの善人、裏との?がりは本来薄い男だと判断して一気に畳みかける方針に切り替えた。

「どうしたんだい、いきなり?」
「兜さん、お互いとぼけるのはやめましょうよ。先に謝罪しておきますが、取材の話は全て嘘っぱちです」
「そんな……!」

 顔面蒼白になり、酸欠の金魚のように口をパクパクさせる姿には同情の念が湧いた。だがそれも無理はないだろう。裏デュエルコロシアムの開催は傷害の発生するデュエルの教唆、「BV」の発展に手を貸したテロリストへの加担、決闘罪といった様々な罪の複合として処理される。やり方によってはこのネタだけで向こう30年は強請りに使えるほどの大罪だ。これまで重ねてきた罪らしい罪といえばせいぜいそのあたりでの立ち小便ぐらいがマックスであろう善良な市民にとっては、異次元の出来事と言ってもいいほどに遠い世界だろう。
 自らの振るったムチが十分な効果を発揮したことを見て取り、やや口調を柔らかくする。ここで重要なのは、あくまでも自分の今後については匂わせるのみに留め当人に勝手に想像させることだ。うかつに踏み込んで余計なことまで口走ると、恐喝の罪で身内の世話になるのは一転自分の方となる。そしてムチが効果を発揮したら、今度は飴の番となる。

「しかし兜さん、私は別にどうこうするつもりはありませんよ。私も、デュエルモンスターズを愛する身。むしろ今回お邪魔した理由は、その逆です」
「逆……ですと?」

 その言葉にあからさまにほっとした様子を隠そうともせず、額に汗を浮かべたまま疲れきったようにソファーに腰を深くおろす兜。その時点ですでに9割9分交渉がこちらのペースであることを確信しつつも、鳥居はここで気を抜くほど甘くはない。依然として周囲への警戒は続けつつ、最後まで気を抜かずに締めにかかる。

「何を隠そう、私もデュエリストの端くれでして。主催者であるあなたからの口添えさえいただければ、今回の裏デュエルコロシアムに今からでも参加できるのではないかと」
「なるほど……」

 こちらの狙いを知り、小さくうめく声が鳥居の耳に入
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