第三十八幕:架け離れゆく虹
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
七夏「くすっ☆」
傘を持つ仕草の七夏ちゃんを撮影した。
時崎「七夏ちゃん!」
七夏「はい☆」
時崎「少し、庭を歩いてみて」
七夏「はい☆」
七夏ちゃんは、街と海がよく見える所まで歩いてゆく。俺はその後を追いかけながら、撮影を行う。自然な七夏ちゃんの姿をたくさん残してあげたい。
時崎「七夏ちゃん! 足元に気をつけて!」
七夏「柚樹さんもです☆」
時崎「ああ」
七夏「今日は遠くの景色までよく見えます☆」
時崎「そうだね」
七夏「あっ!」
時崎「!?」
七夏ちゃんは空を見上げる。
時崎「七夏ちゃん!?」
七夏ちゃんが空を指差す。俺も空を見上げる。しかし、青空以外に特に何かが見える訳ではなく、俺は七夏ちゃんに視線を戻す。七夏ちゃんは空に大きな円弧を描くように視線を動かす。俺も、もう一度空を見上げたけど、やっぱり青空以外は何も見えない。飛行機でも飛んでいるのだろうか?
七夏「見えませんか?」
時崎「え!?」
更に目を凝らしてみると−−−
時崎「あっ!」
意識すると「それ」は、少しずつ空に浮き上がってきた。雨が上がり、心も晴れる気持ちにさせてくれるはずの「それ」を見て、俺の心は無意識に曇ってしまった。
気が付くといつの間にか現れている「それ」が生まれる瞬間を目の当たりにした。感動的な光景・・・のはずだが、なんでこんな時に・・・。
七夏「・・・・・・・・・・」
時崎「・・・・・・・・・・」
ダメだ、こんな表情を七夏ちゃんに見せる訳にはっ!
七夏「・・・柚樹さんっ☆ 凄いです!」
時崎「えっ!?」
七夏「こっちから、あっちの島まで掛かってます☆」
時崎「・・・・・」
七夏ちゃんは「それ」を見て大袈裟にはしゃいでいる・・・けど、俺には分かる。七夏ちゃんは無理をしている。
七夏「・・・・・柚樹さん」
時崎「!?」
急に落ち着いた様子の七夏ちゃんに、俺の心は大きく動揺する。
七夏「虹は、どんな色に見えますか?」
前にも訊かれた事。七夏ちゃんは、もう分かっているはずだ! 俺だって分かっている! 七夏ちゃんの見ている虹と、俺の見ている虹が同じであり、違うという事を。なんて答えればいいっ!
時崎「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんて答えればいいんだよっ! 俺は今まで何をしてきたっ!
七夏「うぅ・・・」
時崎「っ!!! 七夏ちゃんっ!!!」
七夏「ご、ごめんなさいっ!!! 私のせいで・・・」
時崎「!!!」
七夏「私のせいで、嫌いになっちゃったら・・・」
時崎「!!!???」
嫌いになる!?
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ