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翠碧色の虹
第三十八幕:架け離れゆく虹
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「必要最低限でいいと思うけど」
七夏「だから、不自然になってしまうのは分かってるのですけど、早く答えなきゃって思うと、上手く言葉が出てこなくて」
時崎「まあ、そんなに身構えなくても、楽しみを見つけながら進めるといいかも?」
七夏「楽しみ?」
時崎「俺ならそう考えるかなって」
七夏「・・・・・えっと、『それは岩が隆起? しているだけだ。彼女の父は話した』」

七夏ちゃんは、宿題の英文を眺めながら翻訳する。俺もその英文を見て−−−

時崎「『ああ、それはただの出っ張りだ。彼女のお父さんはそう言った』」
七夏「え!?」
時崎「もっと砕けた感じで!」
七夏「えっと『岩』は?」
時崎「砕いた!」
七夏「え!? 無くていいの?」
時崎「話しの流れから、分かる事だからね!」
七夏「お話の流れ・・・」
時崎「『それ』が岩を含んでるから」
七夏「くすっ☆」
時崎「少し、楽しくならない?」
七夏「はい☆」

確かに、単語を繋ぐだけでは滑らかな会話にはならない。

時崎「どうしたの?」
七夏「私、前に海外からお泊りのお客様が来て・・・上手く話せなくて・・・」
時崎「そうだったね。でも、その相手はそれで怒ったりした?」
七夏「え!?」
時崎「一生懸命伝えようとする七夏ちゃんの事を、待っててくれたんじゃないかな?」
七夏「あっ・・・私、ひとりで焦ってたような気がします」
時崎「七夏ちゃんなら、相手が一生懸命だったら、応援するでしょ?」
七夏「・・・・・柚樹さん」
時崎「ありがと・・・です☆」

英語が上手く話せる事よりも大切な事。七夏ちゃんは知っていると思う。

七夏「私、頑張ってみます☆」
時崎「ああ!」
七夏「あとは、自由研究のテーマ・・・どおしようかな?」
時崎「あ、昨日、本屋さんで話してたよね?」
七夏「はい☆」
時崎「何か楽しそうな事が無いか、探してもいいかな?」
七夏「え!? いいの?」
時崎「もちろん、でも、研究そのものは七夏ちゃん主で!」
七夏「はい☆ ありがとうです☆」

窓が明るくなり光が差し始めた。

時崎「お! 雨、あがったみたいだね!」
七夏「はい☆」
時崎「七夏ちゃん、ちょっと庭に出てみない?」
七夏「え!?」
時崎「外の空気で頭もすっきりするし、自由研究のテーマも見つかるかも?」
七夏「くすっ☆」
時崎「あと、晴れた明るい日差しで、今朝と同じように玄関前で七夏ちゃんを撮影したいな」
七夏「はいっ☆」

俺は七夏ちゃんと一緒に玄関の前に移動した。

七夏「柚樹さん☆」
時崎「え!?」
七夏「こう・・・かな?」

七夏ちゃんは。傘を差すような仕草を行なってくれた。今朝の出来事と重なる。

時崎「傘を持ってないと、なかなか面白いね」
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