大神村の怪異
Part.8
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物によるダメージを受けて《耐久力》が減少した場合に《幸運》判定を行い、成功した場合、緑の石……シュブ=ニグラスの力の結晶が弾け、失った記憶を取り戻す。
あなたが真の力を取り戻し理性が残っているのであれば、善の心を持つ豊穣神としての全ての力を使うことができるだろう。
――――・――――・――――・――――
「え、ええ!? これって……」
はい。そういうことです。それがあなたの本当の秘密です。
「おい、なんだ。何が書かれているんだその紙には」
それはすぐにわかりますよ。それではこのセリフを咲夜、お願いします。
「……わかりました。では庇った後、小さく笑いながらお嬢様に微笑みかけます」
「え?」
「――思い出しました。お嬢様、この咲夜、この身、この力の全てを以ってあなたをお守り致します」
芯のある強い言葉がこの中央会館に響いた。音響効果などないこの建物でも、小さく静かな口調であったものの、その存在感のある美しい声は確かにこの場の全ての生物の耳に届いた。
全ての生物の動きが止まり、その声がした方へ顔を向ける。そこにいたのは仕えるべき主を守るべく戦っていた美しき銀の従者……十六夜咲夜であった。
「え? 咲夜?」
ピシリッ。
まるで池に張った氷に亀裂が入った音がする。
ピシリッピシリッ。
それは彼女が首から提げている緑色の石の付いたペンダントから発せられている。何もしていないのに石に皹が入り、その緑色の輝きは皹が入れば入るほど強く強くなっていく。
ピシリッピシリ……パシッ!
やがて石が砕け、パラパラと破片が地面に散らばる。欠片が散らばった更地だった土間には緑色の草が生え、色とりどりの花が咲き誇り、それは植物の生えていない空間全体に広がっていく。
変化はそれだけでは留まらず……十六夜咲夜の身体にも起き始めた。
優しい白いヴェールを纏った緑色の光が彼女の体を包み、灰色だった瞳は緑色に輝き、銀色だった髪の毛にも薄い緑の色彩が加わる。そして……彼女の髪の毛に隠れるように、しかし確かにそこに生えている2本の山羊の如き白い角。背中には2対の薄緑色の翼が花咲くように生え揃っていた。
明らかに人間の姿ではなくなった咲夜。しかし、『あのとき、自分を助けてくれた愛おしき主を守る』というその誓いは清き豊穣の神の姿となっても変わることはない。
仕える主であるレミリアを映す翠色の双眸には、決意と覚悟、そして何よりも純粋な強い忠誠の感情が込められていた。
――To be continued…
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