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社会人共がクトゥルフやった時のリプレイ
おまえがちょうどいい
Part.4
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とができたんだから」

「……このタイミングね。予坂さん、本当に不躾な質問ですが、16年前の事件はどこまでが真実なんですか?」

 その萩村の質問に、予坂さんは嫌な顔1つせずに答えてくれる。

「自殺したっていう噂以外は、多分ほとんど全部真実なんじゃないかしら? 身籠ったこととか、賀川先生に相談したこととか、登校できなくなったとか、家出したとか、全部本当だもの。まぁ、家出したって言っても確か2日くらいで戻ったけどね。でも家族と相談して遠くへ引っ越すことにして、そのまま挨拶もなしに引っ越しちゃったから自殺なんて噂が出ちゃったのかもね」

「その……賀川先生のことは恨んでいますか? 厳しいことを言われたと俺たちは聞いたんですが」

「まさか、恨むなんてとんでもない。確かに賀川先生に相談して、凄く怒られたし、キツい叱責を受けたのは本当よ。でもね、考えてみたら全部私のことを案じていた言葉だってね、家出してしばらくして気が付いたの」

 そう話す予坂さんは穏やかに目を細めながら当時を思い出すように顔を上げる。《心理学》を振るまでもなく、その言葉が彼女の本心だということが伝わってくる。

「真面目な先生だったもの。だから私は賀川先生に相談したの。あの人ならきっと一緒に考えてくれるって。だからあんなに怒られた時は本当に悲しくて、傷付いちゃって。でもね、私が甘かったの。あの人は怒りながらだったけど、引っ越すのか、留まるのか、親にはもう話したのかとか、当たり前のことを言ってきただけだったのにね」

「……いい先生だったんですね」

「ええ。家出して頭冷やして、家族にも打ち明けて……それで私は引っ越してシングルマザーとして子供を育てようって決心できたの。相手の男は私が身籠った途端に突き放してきたから見切りもつけられたしね。本当は先生に挨拶していきたかったんだけど、学校に行くのが怖くて結局そのまま……」

「それがこんな事件にまで発展するとは。でも私が同じ立場だったらって想像すると仕方がないのかもしれませんが」

「でもあなたたちのおかげで、こうしてもう一度この学校に戻って来られたわ。賀川先生はやっぱりいらっしゃらなかったけど、それでも私はこれでようやく過去を清算できそうなのよ。ありがとう」

「い、いえいえとんでもない!」

「どんな事情であれ、私たちは私たちのためにあなたのことを調べていただけですから」

「ああ。あなたが礼を言うことじゃあありませんよ」

「私が言いたいから言うのよ」

 そういう彼女はすっきりとした晴れやかなものだった。本当に踏ん切りが付いたのだろう。

「そういえばあなたたちは今何年生かしら? 仲が良いみたいだし、同学年?」

「全員2年生です。1年生からのクラスメイトで、馬も合って
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