おまえがちょうどいい
Part.4
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甘い香りが漂っていることに気が付いたよ。
「よし、ここに間違いはないな。見つけたぞ」
「チラシを手に取っていいかしら?」
いいよ。
「チラシに書かれている日付を確認する」
そのチラシは3日前の近くのスーパーの特売のチラシだ。
「学園に影法師が現れたのと同時期ね。GM、部屋のインターホンを鳴らすわ。反応はある?」
反応はないねい。
「じゃあノックをしながら名前を呼びます。賀川さん、いらっしゃいませんかー? 反応はありますか?」
いんや反応はない。
「ドアノブを回してみるぞ」
施錠されていないようだ。ドアノブがいっぱいまで回っている。
「入る前にアパートの住人に訊き込みをしましょう」
アパート全体に人がいるような雰囲気はない。全員仕事やらなんやらで出払っちまっているみたいだ。
「じゃあもう中に入るしかないな。俺が最初に入ろう。《SIZ》も《STR》もそこそこ高いしな」
「私は最後尾。文は2番目にしなさい、多分そこが安全よ」
「じゃあお言葉に甘えて部屋の中に入ります」
「部屋の中はどうなっている? ダイスを振らなくてもわかる情報を教えなさい」
あいよ。
部屋の中は甘い香りで充満している。充満していると言っても気分を害すほどの物じゃあない。爽やかな香りだからな。
狭いアパートだから玄関から部屋の中は丸見えだ。玄関脇に小さなキッチン、8畳ほどしかない居間、ユニットバスとトイレがあるワンルームだ。電気は点いてなく、今日はそこそこいい天気だというのに部屋の中は薄暗い。窓に張り付いている薄紫色の花のせいで日航が部屋の中に入り辛くなっているからだ。
「電気を点けるわ。こういうアパートは玄関に一通りの電気のスイッチがあるのよ」
あるねい。じゃあ部屋は明るくなったわ。
「靴を脱いで部屋の中に入る」
「私も靴を脱ぎましょう」
「……私だけ土足なわけにもいかないし、脱ぐとしましょう。居間に行きましょう。居間はどんな感じ?」
折りたたみ式の机と本棚くらいしかない質素な部屋だ。
居間にも窓際に張り付いていた紫色の花が咲いている。しかし、どういうことだろうか。その花々は床全体に広がっているのではなく、部屋の中央にある何かを苗床としているかのように異常に繁殖していた。例えるとするならばまるで棺桶のようだ。大の大人1人をかたどったように花々は生い茂っていた。その苗床……花々の下には根に覆われた肌色の何かがそこにあった。
それは眼鏡を掛けた1人の男性だった。痩せこけた頬に無精髭、白髪交じりのぼさぼさな髪の毛、生気を感じさせないほど真っ白になった肌とやつれた姿のまま眠る男性。……いや、おまえさんたちは気が付いている。その男
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