クロノスを喰らうもの
Part.10
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……その理人の説得により、理子の、濁り切った真っ黒な瞳に光が戻りました。ハッとした様子で改めて理人を視界に入れた理子の瞳から、1つ、また1つと大粒の涙が溢れていきます。《精神分析》や《心理学》を振るまでもありません。……理子は正気を取り戻したのです。
「……思い、出した……! 私は……私は不幸なんかじゃ、ない……神様なんかに縋らなくたって、私は幸せだった……!!」
そういうと、理子は再び瞼を閉じ……ぶつぶつと呪文を唱え始めます。するとどうでしょう。浮かび上がる不可能図形がどんどん消え失せていくではありませんか。
「これは……この呪文は《その者の退散》か!」
そうです。やがて天井から差し込む月光は元の美しいものに戻り、大講堂に召喚された空鬼の姿も見る見るうちに消え失せていきます。その光景を見た智代は声を荒げます。
「理子! 何をやっているの!? 今すぐやめなさい! あなたはクロノスの巫女! クロノス様をこの世界に導くことこそあなたの使命なのです!」
「五月蠅い! 私は理人さえ……理人さえいれば、後は何もいらない!――神様なんて、私に必要ない!!」
張り裂けそうな、それでいて魂が籠っているその声が大講堂に響き渡る。するとそんな彼女の言葉が届いたのか、魔方陣は一気に消え、空鬼もそれに呼応するかのごとく時空の彼方へと消えていきました。
マインドコントロールから完全に解き放たれ、数多くの呪文を唱えて力を使いすぎた理子は崩れるように倒れ込みますが、理人がそんな理子の体を抱くように支えます。戦闘終了です。
発狂している皆さん、全員正気を取り戻してください。不定の狂気も解除します。
「……はっ! お、終わった……のかい?」
「ああ、終わった。……朝ドラみたいな三文芝居は嫌いだがまぁ、たまに見るのも悪くないものだ」
「……ボクは本当に何をしていたんだろう?」
「ぶっちゃけ俺も何をしていたか覚えていない。なにか、変なこと言っていたか?」
「ええ、言っていましたね。ドン引きです」
そんな感想を各々抱く中、1人、心穏やかでない人物がいました。……儀式に失敗し、怒り狂っている智代です。
「この出来損ないが! 私の計画をめちゃくちゃにしてくれやがって! 殺してやる!」
と、理人くんに抱かれている理子のもとに向かって駆けだします。
「このキチ○イ女、理子くんを殺す気か!」
「理子ちゃんを守ります! ナイフを構えます!」
「《DEX》的に間に合うかい!? 追い付いたら《組みつく》ぞ!」
「俺も手伝う!」
「ボクも向かおう!」
と、あなたたちが智代を止めようと動こうとした瞬間……どこからともなく飛来した青い電撃が智代の体を包みます。それを受
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