何のために
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「はぁ〜・・・」
「どうしたの?ため息なんて吐いて?」
エリーシャは大きなため息とともに領主の机に突っ伏して死んだ魚のような目をしたシオンに対し疑問の眼差しを向けていた。彼がため息を吐くことは珍しくはないものの、ここまでなっているのは極めて稀である。故に彼女はその異様な姿に目を引かれた。
「なぁ、エリー。てこでも動かないものを動かすにはどうすればいいと思う?」
「え?てこ?」
「そいつには曲げられない理由があって、道理も通ってて、どうしようもないもんを、どうすれば覆せる?」
シオンはこの手のものには弱かった。
人の感情に敏感な彼の観察眼故の悩み、今までは“力”で何とかしてきた。しかし、“言葉”による説得をあまり得意としていない。
見えていても、分かっていても、言葉にすることができないもどかしさが彼の心に居座っていた。
補佐官としてエリーシャを置いたのも彼女がシオンよりも話術に長けていたからであり、シオンが不在の時は彼女が領主代理として勤めていた。
「ねぇ、覚えてる?君が私を初めての狩りに連れて行ってくれた時のこと」
エリーシャは唐突に昔のことを話しだした。
「その時はレベルも全然で、今よりも弱くって、へっぴり腰でまともに戦えなかった私に言ったよね。『逃げたい時は逃げて構わない、次勝てばいい。戦闘は喧嘩と一緒、自分が負けたと思わなければそれは負けじゃない』って」
「そんなことも言ったかな・・・」
ずいぶん昔のことを思い出させられ、シオンは苦笑を浮かべた。それを見たエリーシャはただ一言だけ言った。
「今は負けてると思う?」
「・・・あの時お前が言った言葉もそうだったな。なら、その後も覚えてるだろ?」
シオンは腰を上げ、エリーシャに当時と同じ言葉をぶつけた。
「『俺、筋金入りの負けず嫌いだから負けたことないんだわ』」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
何のために戦うか?????
その言葉がずっと引っかかっていた。
シオンと戦ったあの日以降、心にリミッターが掛かったように全力が出せなくなっていた。
理由は分かっていた、
燃え尽きたのだ・・・
あの死闘で本能のままに戦い、全てを出し切った。もう悔いはない、あとはこの身体が朽ちるのを待つのみ、そう思っていた。
なのに何故、まだ僕を縛る?
もう十分だろ?
早く僕を
楽にしてくれ
その時一通のメールが届いた。
『あの時の決着をつけよう。今度は誰にも邪魔させない。これが、最後だ』
宛名には《高嶺雪羅》とあり、僕はすぐに理解した。
彼が待っている
彼が終わらせてく
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