第四十七話 ハーフエルフの少女
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の行き来が余り無い寂れた村がある。そこに二人を隠そうと思う」
「良いと思います。この城に隠し続けていても、東の塔のみ立ち入り禁止という決まりが異質でしたから。何時ばれるか時間の問題でしたでしょう。客である僕ですら、おかしいと思っていたのです。城の者が気付かない筈はないでしょうしね」
「二人を移すにしても、何時ごろが良いだろうか?」
「なるべく、早い方が良いでしょう」
「そうか」
「それと、僕も適当な隠し場所を探しておきましょう。そのウェストウッドも、怪しくなったら新しい所に移すような感じで」
「うむ、よろしくお願いする」
話はこれで終わり、とマクシミリアンは姿勢を崩した。
一方のモード大公は、エルフの妾に未練があるのか、その表情は硬い。
「叔父上、お互い生きていれば、再会の機会は何時でもあるじゃないですか?」
「そうか、そうだな」
「そうですよ……さて、共犯者同士のお近づきの印に一杯、飲りましょう」
マクシミリアンは、懐から一本の瓶を取り出した。
「なんだろうか、ワインとは違う色のようだが」
「これはウィスキーという蒸留酒ですよ。僕としてはこの製法を叔父上に提供する用意があります」
「何が目的ですかな?」
「叔父上とは、これからも良い付き合いをしたい、という事です。この酒盃使ってもよろしいですよね?」
「構わないが……」
許可を得たマクシミリアンは、執務室の端に備え付けられたミニバーからワイングラスではなく、銀製の酒盃を二つ取り出し、テーブルで待つモード大公の前に置いた。
「杖、失礼しますね」
マクシミリアンは、杖を振るい水魔法で氷を作り出し、それぞれの酒盃に入れ、ウィスキーを注いだ。
このウィスキーは、水魔法で無理やり蒸留させた代物だったが、酒飲みのマクシミリアンは魔法で酒を作る事を邪道だと思っていた。
「氷を入れて飲むものなのか」
「他にも色々と飲み方が在りますが、僕はロックが好みですね」
「そういう物なのか」
「それでは乾杯といきましょう」
「そうだな、乾杯」
「乾杯」
二人をほぼ同時に酒盃を呷った。
「ごふぁあ!!」
そして、モード大公はアルコール度数の強さに噴き出してしまった。
マクシミリアンから、モルト・ウィスキーの製法を教わったモード大公は、早速、製造を開始し数年後には『モード・ウィスキー』の名でハルケギニア中に広まった。
後日、ティファニアとその母親シャジャルは、ウェストウッド村へと落ち延び、一先ずの安息を得た。
☆ ☆
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