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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第六十九話来訪者は告げる
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こちらは義理の妹である」「弓月茜と申します。この度は馬堂豊長様と父の代理として参りました」「田崎千豊と申します」「豊浦武文です」
 芳州子爵にして内地東部最大の鉱業主、伯爵家次女、蓬羽兵商会長、そして〈帝国〉軍の占領下におちる龍州と皇都を結ぶ主要三街道の内最南の街道、東沿道を守る西州軍の参謀長、喫煙室に集う四名の内、茜を除く三名は政財官界の要人と言っても誹りを受けない人間だ。
 
「ここに集まってもらったのはほかでもない、芳州の開発についてだ。蓬羽兵商
の協力を得て採掘した鉱石の加工まで私の経営の下で行っているが――」
 豊浦少将に視線を向け、先を譲った。
「それをさらに進めて兵器の生産まで着手したい――もちろんそこで完成させるわけではなくとも金属部品を組み立てる程度ならば問題ない。西原は出資しても良いと考えている、駒州も西原と共同で出資すると返答している」
 芳峰子爵の経営する鉱山街は芳州の州都である美門のすぐ近くである。
 安東家の東州と内地を結ぶ東州灘に面し、駒城家の統治する駒州に接し、東沿道は芳州に繋がっている――つまり西州軍と駒州軍、龍州軍、東州軍から最も近い軍需工業の拠点となりうるのである。

「父からは州政局を通した財政援助を、豊長様からは駒州の運輸業界の取りまとめを行えると」
 茜が控えめな口調で申し添えると芳峰は深くうなずいた。
「よろしい、それでは一つ皆で大儲けしようではありませんか」

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