第二章
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トフが未だに文句の言い合いをしていたため、ヴィルベルトは仕方無く、一人受付へと行って「本日五人で一泊…お願いします…。」と伝え、自分の懐から全員分の金を出したのであった。
その夜…正確には真夜中を回った頃のこと。五人が部屋で休んでいると、ルーファスの部屋の扉を叩く者がいた。
ルーファスは直ぐに目を覚まし、「誰だ。」と扉に向かって問うと、そこから「俺だ。」と言う返答が聞こえたため、ルーファスは多少ムッとして言った。
「詐欺なら間に合ってる。他あたれ。」
そう返されたものだから、扉の向こうに立つ者は慌てて扉を開いた。
「分かってんだろうが!」
そう言って入って来たのは、一人の黒い外套を纏った青年であった。
「うっせえよ、イェンゲン!こっちは寝てんだよ!そもそも、何でリュヴェシュタンの王都に居るはずのお前が、このゲシェンクに入ってんだよ。」
ルーファスは蝋燭に火を点けながら不機嫌に言ったため、青年…イェンゲンは直ぐに返した。
「俺だってこんなとこ来たくねぇんだよ。特に、お前になんぞぜってぇ会いたくなかったんだが、お前の力が必要なんだよ。」
そのイェンゲンの言葉に、ルーファスは顔を顰めた。
「はぁ?俺の力が必要って…何かあったんか?」
「相変わらず能天気な奴だな。お前、ここの王都で何があったか知らねぇのか?」
「何があったんだ?」
ルーファスは目を細め、イェンゲンに問う。問われたイェンゲンは椅子に腰を下ろし静かに言った。
「国王が暗殺されたんだよ。」
その一言で、ルーファスはこの国が今、非常に危機的な状態に陥っていることを悟った。
このゲシェンクと言う国は、謂わば新興国なのである。先の大戦前には六つの小国で構成され、互いに国土を広げんがために戦をしていた。
それが先の大戦の折、アーダンテ・シュトゥフがいがみ合う王らを叱責し、彼らに妖魔と戦う術を叩き込んだのである。
シュトゥフはその後、五人組として仲間と各地を渡って妖魔を倒すことに奔走したが、大戦が終結して彼が再びゲシェンクへと戻った時、六人の王は彼を新たなる王とし、この島全土を一つの国としたのであった。
シュトゥフ自身、民衆の意思を尊重して王にはなったが、それに期限を設けた。新たな国法の制定と公布、国土の正確な地図の作成とそれに基づく登記簿の作成、最後に戸籍の作成を成したら次の王を新たな法で選出し、その者に全て引き継ぐことにしたのである。
シュトゥフが王座にあったのはたった六年であったが、逆に…たった六年で全て成し得たとも言える。現在でも、最も偉大な王と讃えられている。
さて、新法では王の選出に厳しい指定があり、それはリュヴェシュタン同様、数人の大貴族と貴族院の承認を得なくてはならない。この法体制は、シュトゥフが五人組にいた頃に培われたものであ
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